彼は就任して早々、「民族の偉大なる復興」というスローガンを持ち出して、自分の政権の一枚看板の政策理念として掲げた。ここでいう「復興」とはすなわち、近代になってから失われた往時の中華帝国の栄光と覇権を取り戻して、中国が再び世界の頂点に立って周辺国と民族をその支配下に置くことである。
習近平はまさにこのような「偉業」を自らの手で達成することによって、毛沢東と並ぶ偉大なる皇帝になろうとしているのである。
そのために習政権は南シナ海での軍事拠点化を迅速に推し進め、シーレーンという周辺国の生命線を押さえることによって中国の支配体制の確立を目指す一方、「一帯一路」という長期的なプロジェクトの推進によってアジアとアフリカとヨーロッパの一部を中国の経済的支配下に置いて、中国を頂点とした植民地秩序の樹立を企んでいるのである。
同時に、習政権は日本固有の領土である尖閣諸島を奪取する野望を剝き出しにして、尖閣周辺の日本の領海を恣意的に侵犯している。彼らはさらに、独立国家である台湾の併合を国家的目標として公然と掲げ、台湾への侵略を着々と準備しているところである。
かつての前漢の武帝や共産政権の毛沢東皇帝と同様、今の習近平政権と皇帝になろうとする習近平その人こそ今、日本を含めた周辺国家にとっての災いの元であって、インド太平洋地域の平和と秩序を脅かす最大の脅威となっているのである。
そして本書が刊行された2022年の秋には、開催予定の共産党大会において習近平政権が3期目に突入する見通しである。そうすると、2022年秋から2027年秋までの3期目の5年間こそが、習近平政権が周辺世界にとって最も危険な時期になるのではないか、と予想される。
というのも、もし習近平がそれまでの2期10年間で「皇帝」としての独裁的地位を完全に確立したうえで3期目に突入するのであれば、この3期目においてこそ彼は歴史に残るような偉大なる皇帝となるべく、「民族の偉大なる復興」の完遂に向かって全力疾走するであろうからである。
そして、「民族の偉大なる復興」の完遂の印はすなわち、彼自身がいうところの「祖国統一の達成=台湾併合」であるから、2022年秋以降の習政権と中国が武力による台湾併合に国力のすべてを傾ける可能性は大である。
もちろん「台湾有事はすなわち日米有事」という言葉が示しているように、習近平の中国が台湾海峡で戦争を発動すれば、日本周辺の平和は完全に破壊されてしまい、日本という国は否応なくそれに巻き込まれて戦争に関わることとなるであろう。
こうして見ると、隣の中国で誕生した「習近平皇帝」という怪物こそ、日本と日本周辺の安全と平和にとって最大の危険であることがよくわかる。中国の政治がいつまでも「皇帝の時代」の悪しき皇帝政治の伝統から脱出できない限り、われわれはいつまでもこの悪の帝国と対峙しなければならない。
日本とアジアの平和を守っていくために、日本は覚悟を決めて同盟国との連携を強め、危険極まりない「習近平皇帝」の暴走を封じ込めていかなければならないのである。
更新:11月24日 00:05