Voice » 政治・外交 » 「キン肉マンも規制?」習近平独裁体制でいよいよ中国がヤバくなる3つの理由

「キン肉マンも規制?」習近平独裁体制でいよいよ中国がヤバくなる3つの理由

2021年11月24日 公開
2024年12月16日 更新

渡邉哲也(経済評論家)

中国

2021年11月、中央委員会第6回全体会議が開かれ、習近平氏を「建国の父」毛沢東、改革開放政策を提唱したトウ小平を継ぐ「新時代」の指導者とする「歴史決議」が採択された。今年9月に中国共産党が創設100年を迎え、さらに2022年の共産党大会に向けて、習氏の権威づけは一層強固なものとなった。

本稿では、人気経済評論家・渡邉哲也氏の新著『世界と日本経済大予測2022-23』(PHP研究所)より、強大化する中国・習近平体制の今後についてたっぷりと解説する。

※本稿は、渡邉哲也著『世界と日本経済大予測2022-23』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものを紹介する。

 

毛沢東と並ぶ「指導者」に

中国では、5年に1度、中国共産党大会が開催される。次回は2022年秋の第20回「共産党大会(中国共産党全国代表大会=NCCCP)」である。

その前に中国共産党の最高指導機関の中央委員会が開催する「全体会議」がある。ここで、決定すべき内容を完成させる。いわゆる「中全会」と呼ばれるもので、今年11月に6中全会が開催され、さらに翌年に7中全会が開かれる見通しだ。

そこで"シナリオ"を決めて2023年「全人代(全国人民代表大会)」で発表する。中国の国会と呼ばれる全人代では、国家主席が任命されるだけでなく、国際社会に「こういうことが決まりました」と発表をする株主総会的な位置づけになる。

さらに中全会に向けて、中国共産党常務委員会が定期的に開かれ、日本の閣議決定のようなものを行なっていく。中全会でいわゆる国会審議を行ない、最後に全人代で発表してシャンシャンするという構造である。NCCCPこそが中国の最高指導機関で、全人代より規模も大きく、権限もはるかに強い。

習近平としては、2022年のNCCCPまでに自らの就任期間を無制限にすることを確実にし、独裁体制を確立させたいものと思われる。先述の6中全会において中国共産党が習近平を毛沢東、トウ小平を継ぐ「新時代」の指導者とする「歴史決議」を採択したのはそのためだ。

 

国定教科書以外は認めない「教育改革」

このような中国の意思決定システムのなかで、再共産主義化と言われるプロセスが進んでいる。目に見える例としては2021年9月から教科書制度が変わったことだ。

これまで省ごとに採択されていた教科書を、国定教科書に統一した。その教科書は、中国共産党に都合がいいように編纂された歴史や文化を徹底的にすり込む内容となっており、西欧諸国の思想を否定するものと言われている。

言うまでもないが、偉大なる中国が前面に押し出され、客観的事実とは異なる内容が記載された。たとえば、清代の地図を指して、それがかつての中国だったとする。清朝は女真族の国家なのに、漢民族が支配していたことになっている。

中国では王朝が替わるごとに歴史の改竄が行なわれてきた。新たな支配者にとって都合の悪い過去の記述は書き換えられてしまう。平気で焚書が行なわれてきた国では、21世紀のいまでも当たり前のように歴史の改竄がなされる。

今回の国定教科書においては、中国国内でも否定的な見方のあった文化大革命が正義とされ、さまざまな歴史が書き換えられた。これを中国は「教育改革」と称するが、実態は国定教科書以外の教育を認めないというもの。

家庭教師の禁止、外国教育の禁止、外国教師による教育の禁止、そしてIT大手、ITなどを使った学習塾の営利事業の禁止、ゲーム等に関しての検閲の強化・禁止、タレントに関しても活動に対する規制強化、場合によっては禁止という、さまざまな文化的な制限をかけている。

中国では9月から新学期が始まるが、こうした強力な規制がかけられ、外国カリキュラムによる初等教育が完全禁止されたなかで、外国人学校をどうやって運営するか問題になっている。国定教科書から少しでもはみ出た教育を子供たちに与えないためのもので、思想統制そのものである。

同時に、大学や高いレベルの教育機関においても、国定教科書の内容に添わない歴史教育、そして西洋文化教育研究等が禁止される方向で進んでいる。これは、まさに中国の文化大革命Ver.2とも言っていい。

次のページ
政府にたてついたジャック・マー >

Voice 購入

2025年1月

Voice 2025年1月

発売日:2024年12月06日
価格(税込):880円

関連記事

編集部のおすすめ

習近平が世界地図の上に引いた“2本の線”の意味

日高義樹(ハドソン研究所首席研究員)

習近平が台湾攻撃に熱心な理由

日高義樹(ハドソン研究所首席研究員)

「やってはいけない」と言われてもやり続ける、中国の「お国柄」

高口康太(ジャーナリスト),西谷格(ノンフィクションライター)