源義経、楠木正成、西郷南洲……自己保身を求めず、清廉潔白を貫いた典型的な「日本武士」たちは、東洋的教養人の典型でもあった。武士の魂と儒教の理念と禅の境地が結合して渾然一体となり、つくり上げられた高潔無比、純一至大の人格。聖人の道を一貫して実現させてきたわが日本国こそが、本物の「道義国家」なのである。
※本稿は、石平著『日本の心をつくった12人』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
私事で恐縮であるが、平成24年1月に生まれたわが家の長男は、今や8歳になって小学校2年生になった。この8年間、父親の私も、典型的な「教育ママ」である家内も、息子の教育に大変な力を入れてきた。
赤ちゃんの時からの「幼児教育」はもちろんのこと、3歳で幼稚園に入ったその日から、礼儀と常識を身につけさせるための躾や、豊かな心を育てるための音楽や美術などの情操教育を色々と始めた。
神社やお寺へも時々連れて行って神仏の大事さを教え、海遊館や動物園や科学館も連れて行って森羅万象への好奇心も育てようとした。
そして小学校の受験、ピカピカの1年生としての入学。小学生になってからはなおさら、音楽や絵画の塾に通わせたり論語の言葉や百人一首を暗記させたりした。知識の教育は基本的に学校に任せるが、人間教育を自分たちの手でやろうと考えている。
わが家の人間教育の第一の目標は当然、息子を心の綺麗な立派な人間に育てていくことだ。
常識をわきまえた人間、分別の分かるような人間、礼儀の正しい人間、性格の穏やかな人間、そして大きくなったら社会とお国のために貢献できるような人間。このような人間となってもらうことがまず、わが子への人間教育の達成すべき最低限の目標であると考えている。
そして今、わが子が大きくなるにつれ、この最低目標の達成だけではやはり不十分であろうと思い始めた。
わが子は一人の日本人として生まれてきた以上、その彼をまさに一人の正真正銘の日本人として、日本の精神をきちんと受け継いだ素晴らしい日本人として育てていかなければならないと思っているのである。
が、そのためには、この子にいったいどのような「教材」をもって、どのようなことを教えたらよいのだろうか。
その答えは当然、日本国の素晴らしい歴史にあると思う。そう、この国の長い歴史のなかで生きていた多くの素晴らしい先人たちの、日本人としての生き方や行いと、その生き方と行いにおいて輝いた日本人の心の美学。それらがすべて、わが子の精神教育のための恰好のテキストとなるのである。
とくに、多くの先人たちによって実践されてきた日本独特の武士道精神こそが、日本の心と日本の美学の集大成であり、人間教育のための精神的糧(かて)である。
更新:11月21日 00:05