2020年10月12日 公開
2022年01月13日 更新
《政令指定都市である大阪市を廃止して4つの特別区に再編するいわゆる「大阪都構想」。大阪市と大阪府の二重行政を取り除くことで、行政の意思決定のスピードの向上、無駄な支出の削減などを目指すという構想である。
2015年には住民投票で僅差で否決も、2020年11月1日に再び住民投票が行われることでにわかに注目が集まっているが、この「都構想」の具体的な内容をしっかりと理解できている人は多くないのではなかろうか。
かつて日本維新の会の「選挙キャッチコピー」をWEB記事で大酷評した竹内謙礼氏(千葉県在住)もそんな一人だったが、仕事で「都構想」にまつわる一冊の本を読むこととなり、あることに気づいたという》
3年前、あるWEBニュース媒体で、選挙のキャッチコピーを添削する仕事をさせて頂いた。過去12年間の選挙をさかのぼり、ひとつひとつ添削して、好き放題書かせてもらった。
その中で、私は日本維新の会のキャッチコピーを酷評した。「長い!」「伝わりにくい!」「情報発信の経験不足!」とコテンパンに書いた。ここまで辛辣な意見を書いたら流石に怒られるのではないかと思ったが、案の定、日本維新の会の関係者から「話がしたい」という連絡が入った。
怒られると思いきや、「正直なことをいろいろ書いてくれてありがとう」と感謝の言葉を述べられた。議員の間で私の記事をコピーして読みまわしたらしく、今後の選挙の参考にさせて欲しいとまで言われた。
それまで、私は政治家に対していい印象を持っていなかった。しかし、その電話をきっかけに、少しだけ政治家に対するイメージが変わった。
今回、2020年11月1日に日本維新の会の母体となる、大阪維新の会が推進する「大阪都構想」の住民投票が行われる。
私がキャッチコピーをコテンパンに書いた時と状況は大きく違う。2019年に行われた大阪市長と大阪知事が入れ替わるダブルクロス選挙で、知事と市長の両方が再選。
大阪維新の会は大阪府議会で過半数を占め、大阪市会でも過半数近くまで議席を獲得するほどの大勝となった。その後、新型コロナウイルス対策でも吉村知事の人気は急上昇。今、日本で最も勢いのある政党だと言っても過言ではない。
しかし、大阪都構想に対して反対する意見が多いのも事実である。大阪市がなくなると困ることがたくさんありそうだし、今の状況で誰も困っていないのなら、それをわざわざ変える必要もない。
そもそも、大阪府をひとつにする必要性が分からない。私が住む千葉県にも「千葉市」という政令都市があるが、そのことで困っている住民は誰もいないはずだ。
そんな疑心暗鬼な思いを抱えている中、知り合いの編集者を通じて、過去に編集のお手伝いをさせていただいことのある、日本維新の会の東徹参議院議員が執筆した『やさしく解説! すっきりわかる! 大阪都構想』の原稿を一読して欲しいという依頼を受けた。
先述した政党のキャッチコピーを添削する仕事をした以降、政治関連の仕事が増えていた私は、興味半分でその原稿を読んでみることにした。
結論から先に言えば、この本を読んで「なるほど」と思える点がいくつかあった。
まず、大阪市がなくなっても、思いのほか面倒なことがない点である。住所変更等で住民が手続きすることが増えるわけでもなく、24区が4区に集約されても、従来の区役所の窓口は同じ場所に残り続けるので、特に手続きする場所が遠くなることもない。
大阪市が今まで請け負っていた仕事を、特別区の4区が引き継ぐだけの話なので、行政サービスや地域のお祭りが無くなるわけでもないし、生活保護のサービスが劣化したり、高齢者向けのサービスが消滅したりすることもない。当然、税金が上がったり、行政のサービスの利用料が上がったりすることもない。
「何にも変わらないなら、今のままでいいじゃないか」
そう思ったが、読み進めてみるとそうでもないらしい。現在、大阪は24区に分かれているが、この制度では東京23区のように、各区が予算を決めたり、条例を決めたりする権限がない。しかも、区長も選挙で決められないため、独自の政策を打ち出すこともできない。
つまり、今の大阪市は240万人の住民を、大阪市長一人で面倒を見ている形になっているのである。これでは流石に行政のフットワークが鈍くなってしまう。その問題を解消するために、4つに区分けして、できるだけきめ細かいサービスにしようというのが、今回の大阪都構想の本質部分なのである。
今まで、大阪市を大阪府が吸収してしまうと、おおざっぱな行政になるため、住民には不利益が多いと思っていた。しかし、「機能しない24区」よりも、「機能する4区」に切り替えたほうが、確かに住民に対してのサービスはきめ細かいものになりそうである。
更新:12月04日 00:05