2019年09月18日 公開
2023年02月22日 更新
冷戦時代を通じて、アジアでは、アメリカが中心となった「ハブ・アンド・スポークス」と呼ばれる安全保障の仕組みがつくられた。
自転車の車輪にたとえられる国際安全保障ネットワークは、圧倒的な国力をもつアメリカと、相互信頼を欠いたアジア諸国が結び付いて共通の反共陣営をつくるための工夫であった。
これに対してヨーロッパでは、地域機構が発達し、集団的自衛権を基盤にした地域的集団安全保障の空間がつくられた。この地域機構を通じた安全保障体制は、冷戦中に確立された。
そして冷戦終焉後に、さらなる発展を見せた。旧ソ連を除いて、旧ワルシャワ条約機構構成国は、すべてNATO(北大西洋条約機構)構成国になった。
冷戦が崩壊しても、地域機構を通じた地域的集団安全保障に対する渇望は消えなかったため、東欧諸国がこぞってNATO加盟を希望したことが理由である。
現在の国際社会では、普遍的な集団安全保障と個々の国家による個別的な安全保障だけでは足りず、地域的な集団的安全保障でさらに重層的に安全保障の仕組みを充実させることが、標準的な考え方となっている。
アジアでも同様の安定的な安全保障空間をめざす力学が、徐々には働いた。GSOMIAを具体例とする日韓関係の強化は、その象徴的な一例であった。
この力学が困難に直面したとなると、素朴なハブ・アンド・スポークスの基本形に戻るだけのようにも思える。
しかし21世紀の現代では、ハブとなるアメリカの国力が、著しく低下している。中国の超大国としての台頭を前にして、アメリカのパートナーである日本の国力の停滞も目立つ。
ハブであるアメリカとの同盟を日本が活かすには、地道にでも相互連携のネットワークを広げていかなければならない。
「面」としての地域的な集団安全保障体制への移行には程遠いとしても、「ピラミッド型」体制への発展がなければ、ハブ・アンド・スポークスの維持すらも難しくなってくる。
もちろん日本にとって、オーストラリアやインドが、アメリカと同じくらいに重要になるということはない。しかし日米同盟を堅持するための付加価値としては、「インド太平洋」戦略が大きな枠組みとなるはずである。
そしてそれこそが、日本が日韓対立を超えた「勝ち」を収めるための見取り図でもある。
更新:11月22日 00:05