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イーロン・マスクがトランプ支持に転じた「本当の理由」 保守派を超えた広がり

2026年02月20日 公開
2026年02月20日 更新

スティーブ・イエーツ(ヘリテージ財団シニア・フェロー),渡瀬裕哉(国際政治アナリスト)

スティーブ・イエーツ氏

トランプを支持する層はいまや「草の根保守」にとどまらず、テクノロジー業界にまで及んでいる。チェイニー副大統領の国家安全保障問題担当副補佐官を務め、トランプ政権の対中政策を支えるシンクタンクの要人が、米国の本音を明らかにする。

※本稿は、フレッド・フライツ、スティーブ・イエーツ、渡瀬裕哉著『トランプ・高市同盟で日米は繁栄する』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

単なる保守の集合ではない

【渡瀬】トランプ大統領を支持する人々のなかで、テクノ・リバタリアン(リバタリアン=経済的な自由だけでなく、個人的な自由を重視する思想の持ち主。他者の身体や私的財産を侵害しない限り、すべての行動は自由と考える)と呼ばれる人々がいます。

彼らがトランプを支持する理由、中国に対して持っている不満はどこにあるとお考えでしょうか。

【スティーブ・イエーツ(以下「イエーツ」)】それは非常によい質問だと思います。そして、私が説明する現実を指し示しています。

つまり、現在行政機関を動かしている政権およびそのグループは単なる保守の集合ではないのです。

MAGA(Make America Great Again:アメリカを再び偉大に)連合やトランプ連合、そしてトランプ政権は、それよりもはるかに広範な支持を受けているのです。

私は保守派であり、ヘリテージ財団も保守派の人々が大勢います。私たちは政策が私たちの同意する方向へ大きく進んでいると感じていますが、(それ以外の動きを含む)大統領の連合が向かう方向と私たちの見解が完全に一致し、100%重なるというつもりはありません。

私たちは彼らを「テック・ブロ」と呼んでいます。ベンチャーキャピタルとテクノロジーの組み合わせです。あなたが指摘するように、彼らはリバタリアンを起源とし、リバタリアン的な見解を持っています。

そして、彼らが民主党の投票グループから離脱した最初の要因は、アメリカにおける検閲運動でした。

テクノロジーやソーシャルメディア・プラットフォームが傷つけられることは、アメリカという理念にとって致命的なものであると同時に、技術、科学、開発など起業家精神に富む探求の基盤を傷つけることでもあると彼らは考えました。

イーロン・マスクがその最も有名な例であり、デヴィッド・サックスは、現在ホワイトハウスで正式な常勤職に就いている、そのグループの象徴のような人物です。

 

中国との競争に勝つために必要なエネルギー

では、なぜ彼らは(トランプ)連合の一員であり、(トランプ)連合はなぜ彼らをその一員として迎え入れたのでしょうか?

まず第一に、トランプ大統領は、自分が信じる「アメリカ第一」政策を実行するために継続的に与党多数派を確保するには、従来の共和党の支持基盤を超えたパートナーが必要であることを認識していました。

トランプは、支持層を広げようとしたのです。最初の大きな拡大は、労働者層へのアプローチと貿易政策の調整でした。

第二の大きな要素は、テクノロジー業界でした。彼らが成功するためには、米国におけるエネルギーとインフラの根本的な改革が必要です。

宇宙、AI、その他の分野で勝利を収めるためには、豊富で手頃な価格の、かつ信頼性の高いエネルギーが必要だからです。

気候変動「カルト教団」の政策である二酸化炭素の計量化で、世界がより安全で健康な場所になったわけでも、それで実際に、地球の気温に影響を与えているわけでもありません。

彼らがしていたのは、この競争に勝つために必要なエネルギーを私たちから奪うことだけでした。もし私たちが勝たなければ、この競争には地球上で最も汚染の激しい国、中華人民共和国が勝つことになります。

テクノロジー業界のリーダーたちがトランプ連合に参加したいと考えているのは、そのためです。トランプ主義、MAGA、ニュー・ライト(新右派)。この連合がアメリカにとってのベストな道、テクノロジー分野が発展し続けるための最善の道なのです。

それでこそ、投資家や起業家の克己心が高まり、成功する。それが、テクノ・リバタリアンたちがトランプ政権を支持する理由です。

 

トランプだけが人々の苦痛に耳を傾けてくれた

ドナルド・トランプは、従来の政策によって損害を被った人々を擁護すべきだと考え、自分に共感する国民がアメリカにはたくさんいるだろうと思いました。

それまでにも、保守主義の原則を信じる人々はいました。共和党の候補者の多くが、自由貿易、自由な事業、強力な国防など、私たち全員が共感できる多くのことに賛成でした。

しかし、それは人々の頭に働きかけましたが、人々の心を動かすものではありませんでした。人々を傷つけ、損害を与えた要因が、トランプにそれまでと異なる連合(coalition)を見出すきっかけとなりました。

第1の問題は、NAFTA(北米自由貿易協定)です。トランプは最初からNAFTAに強く反対していました。

第2の大きな問題は、イラク戦争です。トランプは一貫してイラク戦争に反対していました。アメリカ人を害した第3の要因は、我が国への不法移民の侵入でした。

トランプが問題視する第4の要因は(ほかにも挙げることができますが、ここでは4つで終わりにします)、米国と中国の関係における不均衡です。トランプはこれが米国の製造業を空洞化させ、私たちの生活様式に対する重大な挑戦だと見ていました。

共和党候補の多くが、中国を国家安全保障の課題であると語りましたが、トランプのように中国を経済安全保障の課題として語った候補は少なかったのです。

彼が集会を開催すると、数千人が1日中、ときには2日間も会場に列を作って待っていたのはなぜか。なぜそんな現象が起きたのか。

それは政府の政策で苦痛を味わってきた人々が、トランプだけが唯一彼らに耳を傾けてくれた、トランプこそ彼らを代表する人物だ、と感じたからなのです。

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