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GSOMIA破棄の衝撃…日本が韓国に「勝つ」ために必要なこと

2019年09月18日 公開
2023年02月22日 更新

篠田英朗(東京外国語大学教授)

「橋頭堡」である朝鮮半島の動揺

地政学の復権が頻繁に語られている。冷戦終焉後の自由主義的価値観を基盤にした普遍主義的な秩序が揺らぎ、力と力のせめぎ合いを計算に入れた秩序維持の重要性が高まった。そこで地政学の事情を考慮に入れなければならない度合いも高まった。

ユーラシア大陸から突き出る半島部分は、地政学用語でいう「橋頭堡」である。

海洋国家と大陸国家の構造的な確執が生じるユーラシア大陸外周部分の「リムランド」地帯のなかでも、橋頭堡はとくに衝突が起こりやすい。

第2次世界大戦後のアメリカの主要な対外戦争は、すべて「リムランド」地帯で起こっているが、朝鮮半島、ベトナム(インドシナ半島)、アフガニスタン(インド大陸に隣接)、イラク(アラビア半島に隣接)と、とくに「橋頭堡」をめぐる地域で起こっている。

地政学の重要性が語られる時代になればなるほど、朝鮮半島の動揺は高まっているはずだ。

冷戦が終わったにもかかわらず、朝鮮半島には地域秩序の改変が起こっていないため、北東アジアには冷戦体制が残存しているともいわれる。

しかしその内実は冷戦時代とは異なる。北朝鮮が核開発で生き残り策を模索した。中国が超大国化した。

中国に隣接する朝鮮半島は、米中の新しい2つの超大国がにらみ合う時代において、さらに新しい不安定性を抱え込んでしまった。

冷戦の開始時に、二極体制の強烈な圧力によって、朝鮮半島が分割されて統治されるという現象が起こった。

21世紀の世界では、冷戦時代とは違うやり方で、米中の超大国がにらみ合う。半島の人びとにとっては、どちらの側に付くかは、よりいっそう難しい判断となっていく。

アメリカは、橋頭堡への足掛かりである韓国におけるプレゼンスを、簡単には放棄しないだろう。しかし冷戦時代とは異なり、そのやり方は、より突き放した実利的なものになるはずだ。

同盟体制に、事実上の重層性が生まれ、橋頭堡は外周的なものになっていくのではないか。

21世紀の世界においては、米韓同盟とともに、日米同盟の性格も変化していく。冷戦時代であれば、日米同盟は、米韓同盟の運用を補完する役割ももっていた。

インド太平洋戦略の重視は、日米同盟をより中核的な同盟軸とし、米韓同盟を外周的なものにする。

日本としては、その流れをつかみ、強化することができれば、安全保障政策の面における「勝ち」を見通すことができるだろう。

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