「新型コロナ三国志」トランプと曹操の共通点とは？

トランプ大統領は曹操と似ている

一種の余談でもあるが、今の地球上、各国の指導者のなかで曹操と似ていて、曹操の示した「乱世の指導者像」に近い指導者がいるのかを考えてみよう。

私の個人的認識においては、現在の世界各国指導者のなかで、曹操似の指導者がたしかに一人いる。それはすなわち、ドナルド・トランプ米大統領その人である。

おそらく歴代のアメリカ大統領のなかで、トランプほど毀誉褒貶の多い人物はいないであろう。トランプは多くの人々から熱烈な支持を受けると同時に、多くの人々から非道徳的な悪人だと見なされ、嫌われている。

FBI前長官のコミー氏がトランプを名指して「危険かつ道徳的に不適格な指導者」だと批判しているかと思えば、チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世は彼について「道徳心が足りない」とコメントした。

『ハリー・ポッター』シリーズの原作者J・K・ローリング氏に至っては、トランプはハリーの仇敵ヴォルデモート卿以上の極悪人だ、とツイートしている。

そして彼らの批判はおそらく、アメリカ国民だけでなく世界中の多くの人々の思いを代弁しているのであろう。

トランプにつきまとう「道徳心のない悪人」というイメージは、考えてみれば、中国史上の曹操のイメージとよく類似しているのである。

アメリカの価値観に対する嘲笑と破壊

民族も出自も生きる時代も全然違うこの二人は、ある意味では似た者同士である。

二人とも、善悪などの道徳観をほとんど気にせずにして、自分の本性と信念にしたがって気ままに行動し、そして自分の目標に向かって果敢に邁進する。

大統領としてのトランプの場合、就任してわずか2年間で、実現不可能だと思われたイスラム国（IS）の壊滅や大型減税の実施、中国に対する制裁関税の発動、TPPの離脱やオバマケアの撤廃などの選挙公約を続々と実現させてきたことは有名である。

そこで示されているのは、前任の大統領に見られない強い意志と素早い行動力である。かつての曹操と同様、自分の目標実現のためには、どんな困難に対しても怯えずに立ち向かい、どんな強敵に向かっても恐れずに潰しにかかるのがトランプである。

そして、曹操が既存の価値観の破壊者であるのと同様に、トランプ大統領もある意味では、アメリカ社会と世界を支配する価値観への破壊者・挑戦者として登場している。

赤裸々な差別だと思われるトランプ大統領のかつての暴言の数々は、ポリティカル・コレクトネス（政治的正しさ）という言葉で代表されるようなアメリカ社会の「支配的価値観」に対する嘲笑と破壊であることは明々白々である。

自己中心に気ままに行動し、時には噓も平気でつくこの御仁は、伝統的なアメリカ人がイメージする「誠実にして堅実温厚である」というアメリカ合衆国大統領の「然るべき姿」とは程遠いであろう。トランプは、自らの振る舞いをもって「理想的な大統領像」を粉々に打砕したわけである。

そういう意味では、トランプはかつての曹操と同様、まさに既存の価値観と秩序の破壊者であって、反逆児なのである。

だからこそトランプは多くの人々に極度に嫌われて敵視されているが、その一方、この70代の反逆児はまた、多くの人々の熱狂的な支持を受けている。

行きすぎたポリティカル・コレクトネスにうんざりしているアメリカ国民の多く、とくに国民のなかの白人の多くはこうしたトランプに盛大な拍手を送り、あるいはひそかに彼のファンとなって隠れたトランプ支持者となっている。

伝統的な「アメリカ大統領像」を壊していく、という彼の振る舞いはまた、淀んだ中央政治に反感を覚え、その変革を望む多くの国民の支持するところとなっている。

こうして見ると、現代に生きるアメリカ大統領のトランプと、中国の三国時代に生きた曹操という天下の覇者が多くの共通点を持っていることがよくわかるし、トランプ大統領はそういう意味では、曹操によって提示された「乱世に必要な指導者像」にもっとも近い現在の指導者であると言えよう。