Voice » 政治・外交 » コロナ禍で強行された韓国総選挙、与党圧勝で反日路線強化か

コロナ禍で強行された韓国総選挙、与党圧勝で反日路線強化か

2020年04月19日 公開
2022年07月08日 更新

金敬哲(ジャーナリスト)

韓国政治の「一寸先は闇」

このような選挙運動が総選挙での与党の圧勝にどの程度の影響を与えたかはわからないが、選挙後、これらの市民団体と労働団体の国政に対する影響力はさらに強まるものとみえる。文在寅政権としても、2年後に迫った次期大統領選挙で政権再創出に向けて、彼らの支援が絶対的に必要だ。

たんなる、領土問題や歴史問題だけでなく、政治、経済などすべての面において、文政権の反日姿勢が一層鮮明になるものとみられる。

一方、今回の選挙で最も注目を集めた人物は、ソウル・鍾路区(チョンノグ)から出馬した李洛淵(イ·ナギョン)前首相だ。

ソウル・鍾路区は韓国の「政治1丁目1番地」と呼ばれる象徴的な選挙区だ。朝鮮時代から王の住処である景福宮と政府機関があった場所で、現在も大統領府(青瓦台)や外交部、統一部などの政府庁舎が位置している。

このような地盤なので、過去には李明博(イ・ミョンバク)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)両元大統領、丁世均(チョン・セギュン)現首相などが、過去に鍾路区から出馬した。

今回の選挙では、昨年末まで首相を務め、与党にとって次期大統領候補の本命と目される李洛淵前首相と、朴槿恵前政権でやはり首相を務めた野党「未来統合党」の黄教安(ファン・ギョアン)元首相が、この選挙区で一騎打ちとなった。

結果は、54,902票対37,594票と、李前首相が圧勝し、次期大統領に最も近い人物として浮上した。

李前首相は、韓国の三大保守紙の一角である『東亜日報』政治部記者出身で、金大中(キム・デジュン)前大統領を担当していた縁で政界入りした。

故郷である全羅南道・潭陽(チョルラナムド・タムニャン)で国会議員4選を果たした後、全羅南道知事に選出されるなど、選挙に強い人物だ。

今回の総選挙では、共に民主党の選挙対策委員長も兼務した。このポストは、過去に朴槿恵、文在寅両氏も務めた「次期大統領の登竜門」である。

李前首相は、共に民主党内では珍しい「中道派」である。『東亜日報』記者時代には東京特派員を歴任し、日本語も堪能な知日派で知られている。もしも2022年5月に次期大統領に選出された場合、文在寅大統領に比べると、穏健な対日外交政策を敷くことになるだろう。

だが、与党内で決して主流派ではないため、与党の公認候補になれるかは即断できない。韓国政治はいつもダイナミックに変化するので、「一寸先は闇」である。

Voice 購入

2024年12月

Voice 2024年12月

発売日:2024年11月06日
価格(税込):880円

関連記事

編集部のおすすめ

韓国に異常事態 徴用工判決の陰に「反文政権の狼煙」

櫻井よしこ(ジャーナリスト)

コロナ禍の中… 『パラサイト』監督への“厚遇”で反感を買った文大統領

金敬哲(ジャーナリスト)

橋下徹「政府は“要請”ではなく“命令”する代わりに、補償をせよ」

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)