2020年04月18日 公開
2021年07月12日 更新
大ヒットした韓国映画『パラサイト』でも描かれていた、韓国社会の「格差」。新型コロナ禍の中、文在寅大統領はポン・ジュノ監督を大統領府に招いて国民の反感を買ったという。いま韓国はどういった状況に置かれているのか。韓国在住のジャーナリストである金敬哲氏が述べる。
本稿は月刊誌『Voice』2020年5月号、金敬哲氏の記事より一部抜粋・編集したものです。
韓国国内における中高年層をめぐる悲哀について、私は昨年末に出版した『韓国 行き過ぎた資本主義』(講談社現代新書)で詳述した。
韓国が本格的に格差社会へと突入したのは、1997年の年末に韓国を襲った「IMF危機」がきっかけだった。「IMF危機」とは、アジア通貨危機の影響で財政破綻した韓国政府が、IMF(国際通貨基金)から多額の融資を受けるため、国家財政の「主権」をIMFに譲り渡したものだ。
翌1998年2月に就任した金大中大統領は、「民主主義と市場経済の並行発展」を国政のモットーとする「DJノミクス」を提唱し、IMF体制からの早期脱却をめざした。
「DJノミクス」とは、経済危機を招いた根本的な原因を、それまで30年余りにわたって続けられてきた政経癒着と不正腐敗、モラルハザードによるものと見なした。
そしてその改善のため、自由放任ではなく政府が積極的に役割を果たすとする経済政策だ。つまり、公正な競争が行なわれるように市場のルールを決めて、市場を監視し、個人の努力や能力によって正当な報酬がもらえるシステムをつくるというのが政策の核心だった。
しかし、実際に金大中政権が実行した政策は、資本市場の開放、国家規制の緩和、公営企業の民営化、そして労働市場の柔軟化およびリストラ強行など、新自由主義的なものばかりだった。
こうした金大中政権の「劇薬療法」によって、大統領就任から3年半後の2001年8月23日、韓国はIMFから借り入れた資金を、予定を早めて完済し、経済的な主権を取り戻した。
更新:11月22日 00:05