2020年04月19日 公開
2022年07月08日 更新
4月15日、新型コロナ禍のなか韓国で総選挙が実施され、文在寅大統領率いる与党が圧勝した。韓国在住のジャーナリスト・金敬哲氏は、文政権のさらなる反日路線強化が予想される、という。世界がコロナ危機に揺れる非常事態、日韓関係はどうなるのか。
本稿は月刊誌『Voice』2020年5月号、金敬哲氏の記事より一部抜粋・編集したものです。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2月13日、「新型コロナはすぐに終息するだろう」と楽観論を述べた。ところが10日後の2月23日、感染者が600人を超えたことで、国家危機警報を最高段階の「深刻」に格上げし、非常体制に入った。
丁世均(チョン·セギュン)首相が責任者を務める中央対策本部が設置され、政府の全省庁がコロナ対応のための総力態勢に入ったのだ。
教育部は全国の幼小中学校に対し、3月23日まで始業を延期するよう命じ、学習塾に対しても休むよう勧告した。雇用労働部は各職場に時差出勤、時短勤務、在宅勤務の実施などを要請し、最高10日間の家族ケア休暇を積極的に活用するよう勧めた。
文化観光体育部も大規模行事と宗教行事の自制を要請し、国内と海外旅行の自制を求めた。中央対策本部は「社会的距離を置く運動」を提唱し、不要不急の外出を控えるよう国民に呼びかけた。
そんななか、総選挙ができるのかと、多くの国民が危惧したが、文在寅政権は結局、4月15日に強行した。
コロナウイルスの騒動が他国に比べると相対的に鎮静化していたこと、野党の選挙活動が鈍ることなどから、与党が圧勝する「勝機」と捉えたのである。古今東西、危機のときの選挙というのは、政権与党が強いものだ。
判断は的確だった。
国際社会から韓国の防疫を巡る好評が続いたことで、文政権に対する韓国人の評価が跳ね上がり、選挙直前の各種世論調査で文大統領の支持率は50%を上回った。マスコミ各社では与党の共に民主党の圧勝を予想する観測が相次いだ。
今回の選挙運動は、異例づくめだった。通常の国政選挙の場合、候補者は「1万人と握手する」と言われるが、握手は感染につながるので厳禁である。
また、候補者が有権者に顔を覚えてもらおうとしても、外出にはマスク携帯が義務づけられているため、顔はマスクで覆われている。そのため候補者によっては、マスクの上に自分の選挙公約を書いたりしていた。
2019年末に改正された選挙法に基づき、30個余りの比例用政党が乱立する騒ぎもあった。最大野党の未来統合党の反対で、「司法改革案」の国会通過が困難になっていた与党は、キャスティングボートを握っている4つの群小政党との連合を図った。
検察の捜査権を警察と分けるとともに、検察を牽制できる公捜処(高級公職者捜査処)という司法機構を新設するという同法案は、事実上、大統領府関係者に対する検察の捜査を無力化する法案だ。
第1野党の未来統合党の反対で国会で成立できなかったこの法案の国会通過のため、与党は「準連動型比例代表制」という選挙法の改正案で群小政党の協力を得た。
具体的には、地方区の議席と比例議席を連動させて、地方区の議席が多い政党は比例議席を取ることができないようにした。
この新選挙法によると、共に民主党と未来統合党はほとんど比例議席を獲得することができなかったが、与党にとっては政権の命がかかっている司法改革案の成立のほうがより大事だった。
更新:11月22日 00:05