2019年11月22日 公開
2022年07月08日 更新
【洪】私は『反日種族主義』が日本語で出版されたいま、元徴用工問題や慰安婦問題を超えて「韓国の文化と精神はいったい何なのか」という議論を惹き起こすと思います。
日本の人々もこの本を深く読めば、否応なく日本の精神的近代化の諸問題に突き当たり、自問するようになるでしょう。併せて、韓日両国の精神史に対しても問題提起がなされるのではないでしょうか。
日本にはもちろん覚醒した、西欧文明を正確に理解した人々がいると思いますが、集団的に見れば近代化とは結局、和魂洋才と富国強兵です。
2021年のNHK大河ドラマの主人公は、韓半島の運命にも影響を及ぼした渋沢栄一。渋沢がつくった日本初の第一国立銀行は、韓国の釜山に初の海外支店を出し、大韓帝国の発券銀行となって朝鮮銀行になりました。
しかしそれを認めない韓国人も多い。韓日ともに、文明史を巨視的に捉えるのは難しいものだと思います。
【李】日本では昭和期に入って民族主義が高揚し、大陸への進出と並行して日本帝国主義が膨張しました。しかしそのような民族主義は、同時に強力な国家主義の意識を伴います。民族主義の土台には愛国主義がある、ということです。
私が韓国にあえて「種族主義」という言葉を用いたのは、韓国では国家よりも民族を上位の概念とする人々が多いからです。彼らは、韓半島は将来、一つの国家に統合されねばならない、と考えている。
さらに民族を上位と捉える人たちは反対に国家の正統性、大韓民国の正統性を認めません。
現在、文在寅政府と少なからぬ韓国人は、平和体制を通じた国家連合を追求し、支持しています。彼らは大韓民国の歴史的正統性さえも事実上、認めていない。そのため、韓国の民族主義はますます種族主義的な特質をもち、北韓の首領体制を批判意識なしに収容する傾向があります。
反自由主義的、反個人的な性向をさらに際立たせて表している点では、日本と大きく異なるのです。
更新:11月22日 00:05