2019年11月21日 公開
2022年12月15日 更新
憲政史研究家の倉山満氏は、自著『ウェストファリア体制』にて、今こそ日本は16世紀オランダの法学者、フーゴー・グロティウスの思想に学ぶべきと提唱している。
教皇、皇帝、国王、貴族という一握りの特権階級が支配者だった頃のヨーロッパの人々は「人殺し」に明け暮れていた。この「国」という概念すらない16世紀に生まれながら、「戦争にも掟(ルール)がある」という英知を著す信じ難い学者がグロティウスである。
彼の思想はのちにウェストファリア体制として実り、国際法の原型となり、現在の外交情勢の礎となっている。倉山氏は自著にて「ウェストファリア体制を学ぶことが、日本を守る武器となる」ことを強く主張する。
本稿ではウェストファリア体制を分かりやすく伝える倉山氏の新著より、国際法の礎となっているにもかかわらず、世界共通の価値観が通じにくい一部の国について言及した一節を紹介する。
※本稿は倉山満著『ウェストファリア体制 天才グロティウスに学ぶ「人殺し」と平和の法 』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです
現代の世界を見渡せば「ウェストファリア体制」がどれぐらい残っているでしょうか。
主権国家の並立体制は、建前上は残っています。その意味でいえば、世界はいまだに「ウェストファリア体制」です。
日本語の「ウェストファリア体制」とは、
一 心の中では何を考えてもよい
二 人を殺してはならない
三 お互いの存在を認めあおう
という三要素です。そして、これらは最も確立された国際法であり、法則なので否定のしようがありません。
しかし、現実はどうでしょうか。
この三要素が当然だという価値観を持った国はどれぐらいあるのだろうかと、世界を見渡してみましょう。
1991年にソ連が滅んだので、西のほうはまだマシです。
とはいうものの、今はウラジーミル・プーチンという、ソ連の栄光を取り戻したくて仕方がない非文明人の輩がいて、アメリカやヨーロッパが頭をかかえています。
しかし、それでもヨーロッパの真人間は全員プーチン封じ込めを考えて、プーチンを旧ソ連の域内に押し込めているわけです。ウクライナが盾になってくれていて、東欧諸国はロシアの隣国ではなくなりました。
トルコにとってもアゼルバイジャンとグルジア(現ジョージア)が盾になってくれています。ロシアへの盾になっている分、ウクライナとグルジアは酷い目に遭っているのですが。
それでも、ソ連を滅ぼしたのだから、直接国境を接していた昔よりは今のほうがマシというレベルです。
ヨーロッパで、もう一つマシなのがバルカン情勢です。NATO(北大西洋条約機構)が東方拡大しているからというのが大きな要因です。NATOとは、アメリカとヨーロッパの同盟です。米英仏独の大国が束になっています。NATOに入って軍事侵略された国は、ありません。
では、日本の周りで、人を殺してはいけませんという価値観が通じる国を数えてみましょう。
更新:11月22日 00:05