2019年11月21日 公開
2022年10月27日 更新
2019年は、日韓関係の冷え込みが一段と増した年だった。元徴用工訴訟問題の懸案から日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了まで、話題に事欠かなかった。
そんななか、韓国経済に大ショックを及ぼす事態となったのが、2019年7月に日本が安全保障上を理由に韓国向けの半導体素材の輸出管理を強化したことに端を発した「日韓貿易紛争」であろう。
果たして、これが韓国および日本にどういった影響を及ぼすものなのか。渡邉哲也氏の新著『世界と日本経済大予測2020』 (PHP研究所)より、韓国経済が直面するリスクと未来予測について述べる。
2019年7月18日、韓国銀行(中央銀行)は政策金利を1.75%から1.50%へ電撃的に引き下げた。利下げは2016年6月以来、3年1カ月ぶり。これは景気減速に対する韓国の危機感を如実に示すものといえる。
2017年11月、2018年11月と基準金利を0.25%ずつ引き上げていたが、これは半導体メモリーが空前の好況で、国内経済も回復基調が続いていたことによる。
ところが2018年後半になると半導体市況が悪化。「アメリカの利下げを待って利下げを行なうのでは?」という見方があったが、電撃的に利下げを行なわざるをえなかった台所事情に、韓国の苦しさが現れている。
それだけではない。半導体市場で中国から追い上げられているという長期的な問題に加え、日本による輸出規制の強化によって打撃を受け、経済の弱体化が著しい状態になっているという背景がある。
近年の韓国経済を牽引してきたのは、紛れもなく半導体であった。
仮想通貨のマイニング等に用いられる集積回路などへの需要もあったことから、仮想通貨のバブルによって半導体は値を上げ続け、その恩恵を受けていた。
しかし、仮想通貨のバブル崩壊により、半導体価格が1年で5分の1に暴落。ほとんど収益が出ない状況になってしまった。
その結果、貿易収支が赤字に転じ、経済的な苦境を招いたのである。企業自体も内需が減退するなか、企業の資金ショートによる倒産のリスクが高まったことも重なり、利下げを行なったというのが真相である。
今後、もう一段の利下げをする可能性もある。ただ、これはアメリカの利下げと連動してやらないとウォン安が臨界点を超えてしまう可能性があり、そのあたりのさじ加減が非常に難しい。アメリカが利下げをすれば、韓国はそれに呼応して連動利下げという形をとる可能性が高い。
更新:11月23日 00:05