石 たしかに、安倍政権がいま何を考えているかは大事なポイントですが、中国に恩を売って日本のためになることはありません。中国は昔に受けた恩で将来の政策を決めるようなことは絶対にないからです。
福島 いままで日本は、中国に何度も恩を売って失敗していますからね。
石 安倍総理の訪中でもう1つ気を付けないといけないのは、貿易戦争に巻き込もうとする中国の誘導に乗らないことです。おそらく習近平は、安倍総理との会談で自由貿易を強調し、保護主義に反対の立場を表明しようとするでしょう。
自由貿易を原則論として捉えるのは構わないけれど、日本があたかも貿易問題に関して中国の味方になったかのように見られてはいけない。日米離反を狙う習政権に騙されるな、ということです。
福島 習近平は2019年6月末に開かれるG20サミット首脳会議周辺の日程で訪日し、新しい陛下が即位されてから初めての国賓になりたいと考えているのではないか。
今年の5月に李克強が訪日した際、陛下への謁見を賜りましたから、国家主席が天皇に会わないわけにはいかない、と思っているのでしょう。
ただし、日中関係がいくら進展したとしても、尖閣諸島など安全保障上の核心的利益で対立している両国が、同盟国のような関係を築けるわけではありません。
それは米中においても同様で、両国の覇権争いの末路は、アメリカが中国を打ち負かして習近平体制が崩壊するところまでいくかもしれない。米中両超大国の角逐において鍵を握っている国はロシアであり、インドであり、そして紛れもなく日本です。
安倍政権の任期は残り3年ですが、米中新冷戦構造は今後も続いていくと見るべきです。日本の長期的な戦略をいかに地図に描けるかが問われています。
(本稿は『Voice』2018年11月号、石平氏&福島香織氏の「安倍総理、これはいっちゃダメ」を一部抜粋、編集したものです)
更新:11月24日 00:05