石 対米外交や一帯一路の失敗を挽回するために、習近平はいま日本に泣きついています。伝統的に中国は、アメリカとの関係が悪化すると日本に接近する傾向がある。逆にアメリカとの関係が安定すると、そうした必要性は薄れ、日中関係は動揺してしまう。
1989年の六・四天安門事件で中国が国際社会から孤立したとき、江沢民政権は天皇陛下の訪中を取り付け、各国の信頼を回復する突破口を見出しました。そうやって国際社会との関係が改善すると、反日的姿勢に傾倒したのです。
この教訓を踏まえ、安倍総理に進言したい。中国との関係改善自体はもちろん何の問題もありません。しかし、日本政府として「一帯一路を支持する」などということは、くれぐれも口にすべきではありません。
もし日本が一帯一路に関わってしまうと、中国の片棒を担いだ存在として欧州やアジア諸国から批判の対象になってしまう。
これは米中貿易戦争の当事者であるアメリカに対する裏切りにもつながり、日米同盟そのものを揺るがしかねない。火中の栗を拾うような愚策だけはけっして犯さないようにしてもらいたいと思います。
福島 そうですね。すでにビジネスモデルとして破綻している一帯一路に対して、日本政府がどこまで本気で関与するのかは不透明な部分があり、気になるところです。
現在、日本の一帯一路へのコミットの可能性として挙がっているのは、1つが日中の企業が共同参画するタイの鉄道計画、もう1つが日本政府とJICA(国際協力機構)が共同で取り組んでいる西アフリカ「成長の環」広域開発に中国も参加しようという計画です。
西アフリカ「成長の環」経済回廊計画を日本が始めたのは、アフリカで勢力を伸ばす中国に対抗し、国連総会におけるアフリカ票を取り返すためです。
安倍政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、明らかに一帯一路のカウンターパートであり、米国やオーストラリア、インドと連携して対中包囲網を築く試みです。
これらの対中封じ込め策を講じながら、一帯一路において中国と協調する政権の意図はわかりかねます。これはたんなる中国を安心させるためのリップサービスなのか、それとも何か別の思惑があるのかを見極める必要があります。
じつは先日、東南アジアの東チモールを訪問してきました。首都と第2の都市を結ぶ幹線道路は日本政府の円借款で資金を出しているのですが、工事を行なっているのは中国企業で、労働者の多くが中国人労働者。
値段のみでみれば、公平な競争入札の結果なのでしょうが、入札条件であったはずの防塵対策などがいい加減で、地元民に気管支炎が続出するといった被害が出ていました。
一帯一路における日中協力も、日本のお金で中国企業が行なったにもかかわらず、地元民にはあまり恩恵がなくむしろ迷惑のような結果になる懸念もあります。日本は慎重になってほしい。
更新:12月22日 00:05