南京で宿泊していたホテルのスタッフの女性はこう語る。
「南京に行くって決めたあなたに、あなたの家族や友人は『南京の人は石を投げてくるから気をつけて』と言ったんじゃない? でも実際、そんなことはなかったでしょう? 私たちの日本に対する気持ちはとても複雑なものです」
その一方、南京大学の学生の一人は、南京戦の司令官であった松井石根を指してこう語気を強めた。
「彼はアジアのヒットラー。決して許してはいけない存在です。日本人は事実を勉強し、心から反省しなければならない。日本の総理大臣はなぜ南京に謝りに来ないのですか?」
中国は「親日」と「反日」の「ごった煮」である。それは「歴史論争」の渦中にある南京の街でも同様であった。
中国政府は歴史を政治的に都合良く利用し、反日の土壌を固定化しようと試みている。中国国内では、日本兵が中国人を虐殺する「抗日ドラマ」が連日、国営放送によって今も放送され続けている。
このような状態では、日中関係の根本的な改善など望むべくもない。だが、そんな抗日ドラマを遥かに凌駕するかたちで、日本のソフトコンテンツは中国国民の心を掴んで離さない。
7月15日に発売された『世界の路地裏を歩いて見つけた憧れの「ニッポン」』(PHP新書)では、このように各地を自身の足で渡り歩いた筆者だからこそ知ることができた世界の日本観、そして日本の魅力が余すところなく描かれている。
「僕は日本に生まれたかった」
筆者がある異国の少年から語りかけられた言葉の意味とは――。心が温まり、そして深く考えさせられる、感動の紀行エッセイとなっている。
(紹介されている国・地域…満洲、モンゴル、ルーマニア、チェコ、ポーランド、バルト三国、旧ユーゴスラビア、トルコ、シリア、イラク、イスラエル、サイパン・パラオ、フィリピン、台湾)
※本記事の完全版が、『Voice』9月号(8月10日発売)に掲載予定です。
更新:12月04日 00:05