2021年12月28日 公開
2021年12月28日 更新
2021年8月15日のタリバンによるカブール制圧、26日のカブールの国際空港近辺での自爆テロによるアメリカ軍兵士らの死亡、そして9月のアフガニスタン撤退は、アメリカにとって1955年から75年まで20年を費やしたベトナム戦争以来の「完全敗北」である。
まぎれもなく歴史の大転換点といってよい。たしかに以前から、アフガニスタン国内では一般市民のあいだでもアメリカのアフガニスタン撤退が囁かれていた。
「アメリカ軍がカブールから撤退すれば、重しを失ったガニ政権はもたずに早晩、潰れるだろう」
それにしても、これほどあっけない幕切れとは思わなかった。2001年にアメリカがアフガニスタンに侵攻してから20年。外来の価値観の影響を受けて生まれ育った子供が成人した頃合いである。
ソ連共産主義に抑圧された体制下で生きてきた庶民は、タリバンやアメリカの到来によって社会に自由な雰囲気が生まれ、いままでと違う未来が開ける期待を抱いたはずだ。ところがアメリカ軍はアフガニスタンから撤退してしまい、もういない。タリバンの完全勝利といってよいだろう。
いま思えば、2021年8月にタリバンが電撃的に侵攻したのは、コロナ禍だったことの影響が大きい。アメリカやヨーロッパ諸国が軒並み国内の感染爆発を起こし、医療崩壊やロックダウンなど種々の緊急事態に見舞われるなか、中東の対応に経済的資源や人的資源を割く余裕はとうていなかった。
タリバンは欧米の内政状況をつぶさに見て、いわば間隙を突くかたちで攻めの手に出たように思われる。いずれにしても、コロナ・パンデミックがタリバン快進撃の追い風になったことは間違いないだろう。
破壊し尽くされたアフガニスタン・カブールの旧市街
「アフガニスタンでのアメリカの任務は、民主主義国家をつくることではなかった」
その言葉を聞いた瞬間、まさにひっくり返る思いだった。オフレコの話でも何でもない。2021年8月、カブール陥落後にバイデン大統領が行なった、アメリカ合衆国のトップによる公式のスピーチである。
アメリカの目的が民主主義国家の建設ではないというなら、いったいアメリカは何をしに行ったのか。なぜウサマ・ビン・ラディンを殺した時点で、アメリカ軍を引き返させてこなかったのか。
おまけに1976年、アフガニスタンにおける対ロシアの軍事的プレゼンス(存在)を示すため滑走路をつくって梃入れし、ソ連のアフガニスタン侵攻時には最も重要な軍事的拠点だったバクラム空軍基地を、アメリカ軍はいとも簡単に手放してしまった。
更新:11月24日 00:05