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20年の統治でもたらしたのは「欧米の結婚式」? アメリカがタリバンに完敗した理由

2021年12月28日 公開
2021年12月28日 更新

佐藤和孝(ジャーナリスト)

 

イラクのシーア派を太らせて、宿敵イランと組ませる愚策

さらに大きな問題がある。イラク国内のイスラム教徒のうち、65〜67%はシーア派である。サダム・フセインは少数勢力のスンニ派であり、シーア派の拡大を懸念して台頭を抑えていた。

にもかかわらず、アメリカがフセイン政権を潰してしまったら、いったいどうなるか。イラクで選挙を行えば、シーア派の圧勝が目に見えている。イラク国内のシーア派勢力が拡張したうえ、隣のイラン国内で90〜95%を占めるシーア派と手を結ぶのは明らかだ。

中東におけるアメリカの最大の敵は、イランアメリカ大使館人質事件(1979〜81年)で辛酸を舐めさせられたイランである。イスラム革命防衛隊率いるイスラム法学生にテヘランのアメリカ大使館を占拠され、人質救出作戦も失敗するという惨めな結果をもたらした。

その宿敵イランに対し、イラクのシーア派を太らせて組ませるという愚策を誰がなぜ、どのようにして思いついたのか。

アメリカにも優秀な中東専門家はいたはずで、ブッシュ政権周辺のネオコン(新保守主義:自由主義や民主主義を掲げ、アメリカの理念を海外へ広げるために積極的な国際介入を行う考え方)の人々に排除されたと考えるのが自然だろう。

大量破壊兵器の物証はいっさいなかったが、軍需産業と復興需要に関わる企業経営に携わる人々は、イラク戦争でそうとう利益を得たはずである。

しかし、ついにイラクの地に民主主義が根付くことはなく、復興も中途半端に終わった。フセインの残党を排除したため、与党だったバース党の権力やノウハウをいっさい借りなかったのだから、当然の結果である。

もう一つの愚は、いわずもがなテロの報復によってISを生み出してしまったことだ。2014年以降にISが占領したイラクの土地では、北部のニネベ平原のようにキリスト教徒に改宗しない者には納税、退去もしくは死しかないという有り様だった。まさに力の支配である。

したがってISを排除するためには、同じく物理的な力を行使し、強権をもって治安を回復させるしかない。

 

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