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「安保条約があっても」米が日本に援軍を送らない“明確な根拠”

2019年06月26日 公開
2024年12月16日 更新

北村淳(軍事社会学者)

北村淳

<<米トランプ大統領が「安保条約の破棄を示唆」とのニュースが突如として駆け抜け、日本国民に衝撃を与えた。しかし、米シンクタンクで海軍アドバイザーを務めた軍事アナリストの北村淳氏によれば、安保条約が維持されていても、日本の危機に米軍は援軍を送らないと指摘する。

北村氏の近著『シミュレーション日本降伏』では、海洋進出を加速させる中国が魚釣島に侵攻した場合に、日本は短期間で降伏してしまうという衝撃のシミュレーションを展開し、宮古島や石垣島を含む南西諸島を守るための対策が急務だと指摘している。

日中両国の軍事戦力差を冷静に比較分析し、かつ国際社会における中国の立ち回り方も踏まえた結果に導かれたものだが、やはりこのシミュレーションにおいてアメリカ軍は日本の救援に動かない。

なぜなのか? 本稿では同書よりその理由の一端に触れた一節を紹介する。>>

※本稿は北村淳著『シミュレーション日本降伏 中国から南西諸島を守る「島嶼防衛の鉄則」』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

かつての日本海軍・陸軍と似た陸・海・空自衛隊の状態

第二次世界大戦での手痛い敗北後70年以上を経た現在においても、日本の国防システムは日本自身の経験も含めた古今東西の戦例からの教訓をしっかりと反映させているとはいえない。

なぜならば、島嶼国日本の防衛は「海洋において外敵を撃退する」態勢を堅持しなければならないにもかかわらず、相変わらず陸上自衛隊と海上自衛隊、それに航空自衛隊が互いに牽制しながらバランスを取り合っている、というかつての日本海軍と日本陸軍のような状態が続いているからである。

その結果、海上自衛隊と航空自衛隊には「島嶼防衛の鉄則」である海洋において外敵の侵攻を遮断するために必要十分な戦力が与えられておらず、陸上自衛隊は「ファイナル・ゴールキーパー・オブ・ディフェンス」を自認してはばからず、最終的には日本列島という島嶼に立てこもって外敵侵攻部隊と「本土決戦」を交えようとしている始末である(ただし、日本国防当局が来援を期待しているアメリカ軍救援部隊が到着するまでの限定的な「本土決戦」ではあるが)。

東シナ海における中国の侵出政策に対抗する方針に関しても、日本国防当局が想定する戦略は「島嶼防衛の鉄則」を大きく踏み外している。なぜならば、島が占領されたことを前提としての「島嶼奪還」といったアイデアが大手を振ってまかり通ってしまっているからだ。

「島嶼防衛の鉄則」に従うならば「海を越えて南西諸島や九州に迫る中国人民解放軍を海洋上(上空・海上・海中)において撃退してしまうだけの防衛態勢を維持することによって、中国の東シナ海侵出政策を挫折させること」が必要なのである。

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