2021年12月13日 公開
2022年07月11日 更新
2022年3月には、韓国で大統領選挙が行なわれる。韓国の大統領は1期5年、再選は禁止されているため、文在寅大統領は2022年3月には退任するしかない。文大統領が残した「大きな宿題」が経済回復である。じつは、コロナ禍による影響とは異なる理由で、韓国経済が悲鳴を上げている。その理由は何か。
本稿では、人気経済評論家・渡邉哲也氏の新著『世界と日本経済大予測2022-23』(PHP研究所)より韓国経済の今後について解説する。
※本稿は、渡邉哲也著『世界と日本経済大予測2022-23』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものを紹介する。
コロナ禍の有無にかかわらず、韓国の航空会社はどこも青息吐息の状態だった。国内5位のイースター航空が2020年8月に破綻(2021年に会社更生手続きを申請)。さらに11月には政府主導で大韓航空が2位のアシアナ航空を買収へと動き出した。
合併後には大韓航空ブランドに統合され、アシアナという文字は消えるそうだから、まごうことなき吸収合併である。国土面積が北海道と同程度しかなく、国内線の需要は見込めず、人口5000万人程度の国で14もの航空会社(イースター航空を含む)が存在すること自体に無理がある。
この先、破綻する会社が出てくれば、さらに韓国経済の足を引っ張りかねない。大韓航空がアシアナを買収すればほぼ一強状態になるが、その足元も安定しているとは言えない。
日本のANA、JALがリーマン・ショック後に小型機運用に切り替えていったのに対し、大韓航空は大型機運用を中心とした戦略に切り替えた。
韓国からヨーロッパ便、アメリカ便を発着させ、日本の地方空港と仁川をLCCなどで結んでいた。こうして日本からの欧米行き長距離便の観光客を吸い取っていたのである。
日本のローカル空港から羽田に飛び、電車で成田に移動してアメリカに行くのと、地方空港から仁川でトランジットしてアメリカに行くのとでは、後者のほうが圧倒的に楽だったから、利用者は多かった。
しかし、この収益構造が崩れてきた。羽田空港に第3ターミナルができて、ANAの第2ターミナルの国際化が進み、欧米への長距離便も飛ばしているため、地方空港から韓国を経由するメリットがなくなりつつある。
そもそも、相手国の航空行政の不備をついて客を奪うという手法がいつまでも通用すると考えるほうがおかしい。この構造はコロナ禍が収まっても変わらないだろう。韓国の航空業界はいよいよ正念場を迎える。
更新:11月21日 00:05