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日本人が理解しなければならない「韓国人の本音」

2021年07月23日 公開
2022年07月08日 更新

小倉紀蔵(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)

 

理解するのが難しい「韓国のメンタリティ」

韓国だけではない。北朝鮮も中国も台湾も、正常な国家ではない。「これから正常な国家になるために運動している中途半端な状態の国家」なのである。

わたしは、これらの国をけなしているのではない。そもそも世界中に国家は200近くもあるが、そのうち正常できちんとした国民国家、主権国家はいくつあるというのか。国連に加盟しているからといって、正常できちんとした国民国家、主権国家だというわけではない。

特に東アジアは、冷戦がいまだ継続している地域である。中国も朝鮮も、イデオロギーによってきれいにふたつに分かれてしまっている。これらの国を、正常できちんとした国民国家、主権国家として認識すること自体が間違っている。

韓国は、つねに革新を求めて運動する団体である。特に文在寅政権の中枢には、そのようなメンタリティが非常に強い。「正義と革新を求めて運動する団体こそが国家である」という認識を持っている。

この考えから見れば、「正義と革新を求めず、運動しない団体」である日本なぞはきちんとした正常な国家ではないのである。「大韓民国こそ立派な国であり、不道徳で反省しない日本こそ国家として欠損がある」というのが、この政権の根本的な考えである。

この考えを日本人は理解しなくてはならない。ふつうの日本人の感覚では、到底理解できないであろう。しかし、理解しなくてはならないのである。なぜか――。

まさにそのような根本思想を持っている国が、日本のすぐとなりにあるからである。韓国も北朝鮮も、この根本思想の部分は同じである。だから、この考えを理解できるかできないかということは、日本の死活問題なのだ。

 

日本は「国家なき不変の団体」

日本のニヒリズムの根源には、「日本こそもっともちゃんとした国家」だという思い込みがある。

「日本は誠実な国家である。日本はきちんとした法治国家である。日本は国際的に信頼されている一級国家である。日本は経済大国として尊敬されている国家である。日本は平和国家として国際的に重要な役割を果たしている。日本は……」。

こういう認識は、決して間違いとはいえないのだが、残念ながら日本人は、なにかの宗教を信じているかのごとく、上のような認識を強く持ちすぎている。

「日本はきちんとした一流国家である」という誇りを持つことはよいことだが、この認識によって国家に関するすべてのことが思考停止になってしまってはならない。現実を直視しなくてはならない。保守側も左派側も、この「日本はきちんとした国家」であるという幻想を強く持ちすぎている。

だがコロナ禍に対処する政府の取り組みのお粗末さ加減によって、日本がガバナンスと危機管理能力を持った国家だとはとてもいえないことが露呈した。与党支持者たちも、このことにはじゅうぶんに気づいているだろう。

本当は日本は、国家の質ということでいえば低いレベルであるという、だれもが気づいてはいるが声を大にしていいにくかった事実が、コロナ対策というわかりやすい局面で急速にあからさまになっている。

日本人は、日本社会が「動かない」ことをもって、日本という国家が正常だという根拠として考えることに慣れすぎている。

そうすると、不安定に動くこと自体が国家としての欠損と認識されるようになってしまう。もちろん法や社会の安定性は重要である。韓国のような不安定な社会で暮らすことのストレスは、ものすごいものがある。

だが、たとえば、自分たちがつくったわけでもない憲法を不磨の大典とみなし、それを一字一句もいじらないことこそが「きちんとした正常な国家」の根本だと考えるような守旧至上主義(左派・リベラル)が、日本社会では強大な力を持ちすぎている。

日本は「運動がない」ことによって、正常な国家ではないのである。きちんとした正常な国家というのは、自分たちの根本的な法体系であっても、あるいは文化や社会の決まりであっても、果敢に変えていくことができなくてはならない。

それができないのなら、日本は韓国とはまったく逆の意味で、「きちんとした正常な国家」ではなく、「守旧と不変に凝り固まった団体」にすぎないのである。

韓国が「動きすぎるから国家でない」のであれば、日本は「動かなすぎるから国家でない」のである。日本も不動を決めこんでいないで自ら動いたらどうなのだ。そういうことをできるのが、きちんとした正常な国家であろう。

 

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