2020年03月10日 公開
2020年03月13日 更新
吉田昌郎所長を熱演する渡辺謙さん©2020『Fukushima 50』製作委員会
――作中、ダンカンさん演じる『福島民友新聞』の記者が「福島に未来はあるんですか」と詰め寄るシーンがありました。渡辺さんは実際に宮城県気仙沼市でカフェ「K―port(ケイポート)」を開くなど、住民との交流や支援を続けています。いま、被災地に抱いている思いをお聞かせください。
【渡辺】2011年3月の震災から今日まで、福島だけではなく被災したすべての地域に未来はあるのか、とつねに考えてきました。実際、いまだに自分の故郷に戻れない方々もいます。
映画の終盤、コウちゃん(佐藤浩市)演じる伊崎(利夫・当直長)が福島に咲く桜を見上げるシーンは象徴的でした。人が住めないイチエフ(福島第一原子力発電所)の近くに、花だけは生命の息吹を重ねている。美しく咲き誇る桜と目と鼻の先に事故現場があるんです。
絶望ではないけれど、希望とは決して言い切れない虚無感がそこにはある。命の営みが存在する力強さと、イチエフの宿命を背負った男の顔が合わさるあのシーンは、僕は被災地のリアルを映していると感じました。
――ハリウッドデビュー作となった『ラスト サムライ』(2003年)で、渡辺さん演じる武士の勝元盛次が目に涙を浮かべながら、眼前に咲く桜に感無量の表情を浮かべるシーンを想起しました。一人の日本人として、『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)という作品に携わるにあたり特別な思いはあったのでしょうか。
【渡辺】それは当然、ありました。『沈まぬ太陽』(2009年)でもご一緒した若松(節朗)監督や角川(歴彦・製作代表)さんは、社会的メッセージを含む作品をエンターテインメントとして伝えようと意気込んでいました。
僕はその気概に共感した。東日本大震災から10年目のタイミングで、どうしてもこの映画を届けたい。そんな2人の熱意を、僕は受け止めたつもりです。
■映画情報 2020年3月6日(金)全国ロードショー
出演:佐藤浩市 渡辺謙 吉岡秀隆 緒形直人 火野正平 平田満 萩原聖人 吉岡里帆 斎藤工 富田靖子 佐野史郎 安田成美
監督:若松節朗 脚本:前川洋一 音楽:岩代太郎
原作:「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」門田隆将(角川文庫刊)
製作:KADOKAWA 配給:松竹、KADOKAWA © 2020『Fukushima 50』製作委員会
公式HP:fukushima50.jp twitter:twitter.com/Fukushima50JP facebook:facebook.com/fukushima50jp/
更新:12月04日 00:05