2020年03月13日 公開
吉田昌郎所長を熱演する渡辺謙さん©2020『Fukushima 50』製作委員会
3月6日に公開された映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)で主演を務める俳優・渡辺謙さんは、本作以外にも数々の作品で、重要な決断を迫られるリーダーを演じてきた。そんな渡辺さんに、リーダーに必要な条件についてうかがった。
本稿は月刊誌『Voice』2020年4月号、渡辺謙氏の「日本人は震災を『検証』しているか」より一部抜粋・編集したものです。
聞き手:Voice編集部(中西史也)
スタイリスト:馬場順子
ヘアメイク:筒井智美(PSYCHE)
――渡辺さんは今回の吉田所長のみならず、『硫黄島からの手紙』(2006年)の栗林忠道・陸軍中将や、『負けて、勝つ~戦後を創った男・吉田茂~』(NHKドラマスペシャル、2012年)の吉田茂など、究極の決断を迫られる役を多数演じてきました。そうしたリーダーの心情をどう想像しますか。
【渡辺】本作の吉田昌郎さんはもちろんのこと、それこそ吉田茂首相だって国の命運を左右する判断を迫られた際、悩みを抱えながら決断していたと思うんですね。
僕たちはどうしても、歴史を結果から見ます。でも当事者は、右に行くのか左に行くのか、前が見えないまま進むべき道を選ばなければならない。
はたして自分の決断が後世にとって良いことなのか、気持ちが揺らぐこともあったでしょう。
ただそのなかでも、「必ず日本を正しい将来に導くんだ」という信念が、吉田茂首相にも吉田昌郎さんにもあったのだと思います。
彼らを演じながら、雑音を吹き飛ばすような断固たる覚悟がリーダーには必要だと痛感しましたね。
――渡辺さん自身は普段、物事を即座に決断できるタイプですか?
【渡辺】僕は駄目ですね……(苦笑)。仕事を受けるかどうかを決めるときも、「うーん、どうかな」とぐずぐず悩むんですよ。
――それは意外です。
【渡辺】その分、やると決めたあとは、自分に何ができるかを120%考えて取り組みます。出演を決めた仕事には、一直線に気持ちを燃やしていますね。
ただ最近は、出演を決めて撮影に入ったらあまりにもハードで、少し後悔することがある(笑)。
でもそれをネガティブには捉えていなくて、むしろ良い選択をした証拠なのかもしれません。後悔の念が生まれるのは、すなわち自分の思いどおりにいかなかったからでしょう。ということは、自らの経験や想定を超える作品に出合ったともいえるのです。
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更新:11月22日 00:05