2020年02月13日 公開
2020年02月13日 更新
――ジョセフHCは「ONE TEAM」を実現するために何を意識していたのでしょうか。
【藤井】そもそも、「ONE TEAM」というスローガンは、ベスト8という目標を達成するために何をすべきか、コーチ陣全員で逆算して計画を立てた際に出てきたものです。
目標を達成するためにジェイミーが選手に厳しく求めたのは、すべてを犠牲にできるかどうかです。それくらいの強い覚悟をもたなければ、多様なバックグラウンドをもつ選手が一つにまとまるのは難しい。
さらにW杯までの準備におけるジェイミーの戦略で特筆すべきは、日本人の勤勉さを引き出したところかもしれません。言葉を選ばずにいえば、日本人が好む練習の仕方には、非合理的といえる部分がある。
「ぶっ倒れるまで練習したから大丈夫」というように、限界に挑んだ手順やプロセスが自信につながる面があります。
――大会直前の宮崎合宿では、一日三部制の苛酷な練習をしたと話題になりました。
【藤井】これが、ジェイミーの出身国でもあるニュージーランドだと話が違います。オールブラックス(同国ラグビー代表の愛称)の選手たちは合理的で、意味のない練習は嫌う。
「お前の成績はいまこうだから、この練習でこれだけフィットネスレベルをあげよう」とサジェスチョンをしないと動かない(笑)。
――つねに、数字をみせたり根拠を示したりしながら論理的に説明する必要があるわけですね。
【藤井】ジェイミーはニュージーランド人と日本人の違いを意識して練習のメニューを組み立てていった。だからこそ、選手たちとコミュニケーションを密にとるように心がけていました。
もう一つ、日本人の特徴を挙げるならば「言い訳を嫌う」こと。いまだからお話しできますが、(W杯初戦の)ロシア戦のレフェリーのジャッジは、日本側として首を傾げる場面がいくつかあった。
それでも私はジェイミーにそのことは言わないほうがいいと伝えました。審判の判断に意見することは、日本人には言い訳に聞こえるからです。
とりわけ日本人は状況に応じて、同じ言葉であっても、いろいろな意味をもたせて使うため、コミュニケーションには注意を要します。そうした細かいことも含めて一つひとつクリアしながら、「ONE TEAM」をつくっていったのです。
――事実、チームがギクシャクした時期もあったと伺います。そんなときに、ジョセフHCと選手のあいだをとりもったのが藤井さんでした。2018年に日本代表に合流し、同年9月の和歌山合宿以降、「(空気が)ガラッと変わった」とリーチマイケル選手は話しています。
【藤井】たしかに当時はテコ入れが必要なチーム状態でしたが、もともと能力が高く、頭もいい選手ばかりなので、どうすれば「ONE TEAM」として機能するか、話せばすぐに理解してくれました。
私自身も長いあいだ監督をやってきましたし、現役時代にはジェイミーと同じチームでプレーしたこともある。ニュージーランド人の国民性から、ジェイミーがHCとして成功・失敗したときのチームはどうだったか、すべて知っていた。
彼がチームに求めているポイントはよくわかっていたので、そこに向かいどうチームを押せばいいのかがみえていたのは大きかったですね。
更新:11月22日 00:05