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「孤独」が僕たちをつないだ――外国人労働者と向き合う孤独な蕎麦職人。藤竜也インタビュー

2020年01月10日 公開
2020年01月10日 更新

藤竜也(俳優)

藤竜也写真:吉田和本

2020年1月17日(金)より、映画『コンプリシティ/優しい共犯』(監督:近浦啓)が全国で順次公開される。外国人労働者とその周りの人物の「生きづらさ」を描いた本作は、2018年・第19回東京フィルメックスのコンペティション部門で観客賞を受賞し、公開前から話題を呼んでいる。

舞台は現在の日本。技能実習生として日本にやって来た青年チェン・リャン(ルー・ユーライ)は、劣悪な労働環境から抜け出し、リュウ・ウェイという別人になりすまして、蕎麦屋で働くことになる。店の主人で厳しくも温かくリャンと接する弘(藤竜也)。二人は親子のような関係を築いていくが、やがて警察の手が迫ってくる――。

昭和、平成、令和の三代を通じて第一線で活躍し、本作で蕎麦職人を演じた藤竜也さんに、作品の魅力や役どころ、俳優としての信念について聞いた。

※本稿は月刊誌『Voice』2020年2月号、藤竜也氏の「『孤独』が人をつなぐ」より一部抜粋・編集したものです。

聞き手:編集部(中西史也)

 

演じる役の「履歴書」をつくる

――藤さんは、作品のオファーを受けるか否かを、脚本の出来だけで判断するとうかがいました。『コンプリシティ』の脚本にはどんな印象を抱き、出演を決めたのでしょうか。

【藤】 初めに読んだとき、頭の中に映画の光景が浮かんできて「これはイケる」と思いました。僕ら役者も商売だから、作品をやるかやらないかは結局、脚本でしか決められない。

実際に近浦(啓)さんと会って話すんじゃなくて、脚本を通して監督の考えと向き合う。そこでイケるかイケないかを判断するわけですが、重要になるのが「行間にある気迫」です。

作品全体を通して魂というのか、スピリチュアルなものが伝わってくれば演じられる。それは興行的に当たるかどうかではなく、「(作品として)これは自分の今年の一本になるな」という意味です。

――直感的に響く作品の力がある。

【藤】 作品の魅力は一つのセリフやシーンだけからではなく、全体から出てくるものです。脚本を読むのは、文字を追うというよりもその文脈から訴えかけるものを感じとっています。

――撮影前にロケ地の山形県・大石田町に入り、蕎麦打ちを練習していたそうですね。

【藤】 僕が蕎麦を打てなきゃ弘っていう役は演じられないでしょう。僕自身が蕎麦職人になれるかどうかで、役の出来が決まってきます。

――作中での藤さんの手つきは蕎麦職人そのもので、見入ってしまいました。

【藤】 今回、蕎麦屋のセットをゼロからつくってもらいました。美術監督の部谷(京子)さんが蕎麦打ち場をセッティングして、僕はそこに毎日こもりっきり。僕が蕎麦打ちを習得すれば、カメラの前だろうが職人として自然に振る舞うことができる。

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