2020年02月13日 公開
2020年02月13日 更新
写真:吉田和本
2019年秋、初の自国開催となるラグビーW杯(ワールドカップ)での日本代表の躍進に、日本中が感動に包まれた。今大会で、決勝トーナメント進出の「陰の立役者」ともいえるのが、男子15人制日本代表で強化委員長を務める藤井雄一郎氏だ。
ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)の最大の理解者で、選手とのあいだのパイプ役を担ったほか、大会後にはジョセフHCに続投を働きかけて、交渉を結実させている。今回、自国開催のW杯を振り返っていただくとともに、日本ラグビー界の課題と未来について伺った。
※本稿は月刊誌『Voice』2020年2月号、藤井雄一郎氏の「日本ラグビー強化の舞台裏」より一部抜粋・編集したものです。
聞き手:Voice編集部
――あらためまして、ラグビーW杯でのベスト8入り、おめでとうございました。大会で得た収穫や課題についてはどのように捉えていますか。
【藤井】 史上初の決勝トーナメント進出は、やはり大きな収穫だったと思います。強化委員長の仕事は選手の育成やラグビーの普及など多岐にわたりますが、今回は日本大会ということもあり、勝利を最優先にしました。
私が代表に携わったのはW杯2年前でしたが、以降、「負けたけどいい試合だった」ではなく、「ベスト8に入りラグビー史に日本の名を刻む」ことだけを考えてきました。
――ジョセフHCを中心に、多様な国籍出身の選手がいる日本代表を「ONE TEAM」(チームのスローガン)にまとめ上げるのは簡単ではなかったのでは。
【藤井】みなさんにも心当たりがあるかもしれませんが、島国であることも影響しているのか、日本人は外国人を受け入れるのが得意ではない部分があります。
前回大会の2015年大会でも、日本の記者から「日本のチームにこんなに外国人が多いのか」「もっと日本人を使ったほうがいい」という声が頻繁に上がりました。
事実、外国人HCとどう接するべきか、初めは戸惑う選手がいました。これまで多くの世界的外国人指導者が来日しながら、目にみえる成果を出せないまま帰国した原因も、そこにあると思います。
――ラグビーに限らず、スポーツ界においてそうしたケースは少なくありません。
【藤井】普段から外国人がいる環境で過ごしている海外の選手なら、異国から来たHCに何かを言われたら「いや、俺はこう思う」と意見することは当たり前。
一方の日本の選手は、外国人HCに対して自分から積極的にコミュニケーションをとろうとしない。会話はつねに一方通行になりがちで、真の理解が深まらないのです。
その点、日本で暮らし、プレー経験もあるジェイミーは、そうした日本人の性質をよく理解していました。
だからスクラムコーチの長谷川慎であったり、私であったり、日本国籍を取得して国内外両方の文化に通じているキャプテンのリーチマイケルと上手に連携しつつ、少しずつ「ONE TEAM」をかたちにしていったのです。
更新:11月22日 00:05