2019年12月30日 公開
2020年01月21日 更新
写真:吉田和本
――たんにお金をあげるだけではいけない。思わず背筋が伸びる話です。
【木村】 私は世界90カ国を歩いて、いろんな現場を見てきましたが、みんな人の役に立ちたいと願って生きています。それはソマリアの海賊たちも同じだと思いました。
彼らと話をして、「君たちは何のために生きるんだ。人に喜んでもらえることをすれば、自分も生きがいをもって生きていける。だから人の悲しむことじゃなくて、喜ぶことをやるんだ。それが仕事だ」と言ったんです。
――実際にどういった取り組みをされたのでしょうか。
【木村】 われわれはまず、日本人漁師を現地に連れて行き、漁民(民兵)らしき人たちに魚の釣り方を教えました。よく獲れたらわれわれがそれを買い、オマーンまで持って行きます。ソマリアからオマーンまでは一昼夜半もあれば船が着くので、そこから魚をサウジアラビアや日本などに売る。
ちゃんと魚が獲れれば、誰かが買って食べてくれる。それがわかった海賊の多くは足を洗って、漁師に変わっていきましたよ。
――海を糧として生きる者たちに、そこで働く作法と意義を教えたわけですね。
【木村】 いい魚を獲ってくれば買う、それが見返りです。すると自然に経済が生まれてきます。われわれ日本人が美味しい魚を食べられているのは彼らのおかげだ、という自尊心をもたせてあげないといけない。
インドネシアのスシ(・プジアストゥティ)海洋水産大臣は、武力で自国の海賊を撃滅したと言いました。一方、私は、漁の仕方と、ものの考え方を教えることで海賊撲滅をめざしました。
――ちなみに、木村社長の出身である自衛隊の取り組みはどう評価していますか。
【木村】 自衛隊は、危険を顧みずに日本国民の生命と財産を守ってくれています。素晴らしいことです。
でも「百年兵を養うは一日これを用いんが為にあり」という言葉があるように、万全の備えはしつつも、実際には一回でも武力を使っては駄目だと思います。
更新:11月22日 00:05