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「海賊だって人間だ」 “マグロ大王”が語る、海の平和の守り方

2019年12月30日 公開
2020年01月21日 更新

木村清(株式会社喜代村〈すしざんまい〉社長)

木村清

2019年6月、ホルムズ海峡で日本のタンカーが襲撃を受けるなど、「海の平和」が脅かされている。人気寿司店「すしざんまい」を展開する喜代村の木村清社長は、寿司を通して世界の平和に寄与することを掲げている。

自衛隊出身でもある木村社長が「ソマリアの海賊を撲滅させた」と話題を呼んだが、その真相は?築地に構える喜代村本社で話を聞いた。

※本稿は月刊誌『Voice』2020年1月号、木村清氏の「海賊だって人間だ」より一部抜粋・編集したものです。

聞き手:編集部:中西史也

 

人に喜んでもらうという仕事の意義を教える

――「木村社長がソマリアの海賊を退治した」と、一時話題になりました。現地は実際、どういった状況だったのでしょうか。

【木村】 現地に行ってみると、自衛隊のフル装備でね。P3-C 哨戒機や護衛艦が入っていて、ものすごい軍備で活動をしているんだと思いました。

アフリカ東部・ソマリアに隣接するジブチへの自衛隊派遣が2009年に決まり、海賊対処に当たっていたんです。

彼らは、自衛隊出身である私の後輩になるわけで、「ご苦労さん。そんなに海賊が強いのか?」と聞いてみると、「実際にまだ海賊対処はしていませんが、指示に基づいてこれから任務を行ないます」と言う。

じゃあ海賊はどんなものなのだろうと思って、ジブチの大統領夫妻やソマリアの大統領に会って話を聞いてみることにしました。

こうしてジブチ政府とソマリア政府の了解を得た上で、いざ海賊がいるソマリア沖へと赴いたんです。

――抜群の行動力ですね。

【木村】 現地ではソマリアの海賊らしき人と話をしました。彼らは「漁民は魚を獲ったり、ゴミを不法投棄していた。それを見るといても立ってもいられなくなって、違法船を脅かすつもりで捕まえてきたら、お金をくれた。そこから海賊行為に走った」と言うんですね。

――直接、海賊の声に耳を傾けようと、いきなり対話に臨んだのは驚きです。怖くはなかったのですか?

【木村】 彼らも私たちと同じ人間なんです。日本を含め各国は、ソマリアにODA(政府開発援助)でお金を送っています。冷蔵庫やボートも与えている。でもいくら物がたくさんあっても、魚を買ってくれないと意味がない。

ソマリアの人たちは肉食だから、魚は一日一トンも獲れれば十分だと言います。船が一隻か二隻もあれば一トンは獲れてしまうから、何十隻も船はいらない。

だから、その余った船を使って海賊行為に走ってしまうんです。これでは援助になっているとは言えません。

――よかれと思って送った援助のお金が“海賊船”に化けている。あまりに悲しいですね。

【木村】 日本のODAは、現地の人のために本当にやることを成せていません。「ODAで世界を救っている」と言う人がいるけれど、たんなる飾りになっている。

こうしたことを、私はODAの現状を知らない人に対して声を大にして言いたいんです。

本当は、魚を獲る意義や農作物を育てる「喜び」を現地の人に教える必要がある。リサイクルで資源保護をしながら、儲かる仕組みにしなければいけません。

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