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国際法の日本vs歴史認識の韓国、相容れない対立の本質とは

2019年09月20日 公開
2022年07月08日 更新

篠田英朗(東京外国語大学教授)

国際法をめぐる攻め手

まず日本が重視する国際法に関わる分野では、日本は積極的に発信をし、提案をしていくべきだ。現在、日本政府関係者は、韓国大法院判決を「国際法違反だ」と言って反発している。

それはそれでいいが、もっと踏み込んだ説明があってもいいのではないか。韓国内世論や、国際世論へのアピールも意識すべきだ。

個人請求権の有無が論点であると誤解させるプロパガンダが広まっている。韓国大法院判決の問題点を、国際法の観点から丁寧に説明することが必要だ。

外務省でも、何らかのシンクタンク機能をもったチャンネルでもいい。しっかりと日本政府の国際法理解を説明することを通じて、日本の立場の変更がありえないことを韓国側に伝えていかなければならない。

学者との対話も大切にしてほしい(『論究ジュリスト』2019年夏号における国際法学者の萬歳寛之教授の「日韓請求権協定と韓国徴用工判決」論文や拙稿「日韓関係と『法の支配』」などを見てほしい)。

伝統的には、日本人の国際法理解は底が浅い。「憲法優位説」に基づいて、国際法を無視した憲法学通説を信奉してきたのが日本の実情だ(拙著『憲法学の病』参照)。

この機会に、しっかりと国際法を議論できる知的な基礎力のある国に生まれ変わりたい。

国際法を尊重する立場から、攻め手を考えたい。具体的には、将来の訴訟を防ぐための韓国国内の立法措置を求めていい。そのためには行政府の財政措置も示唆すべきだ。

これらの日本側からの要請は、国際法を遵守する立場で、問題解決に真剣になっているアピールになる。

また、確定した判決に基づいた差し押さえが発生した場合には、国家責任法の考え方に基づいた損害賠償請求を主張していい。国際司法裁判所への提訴も当然進めるべきだ。

もちろん、韓国がこれらの措置を容易に導入するとは思えない。だが、交渉が成立しない場合でも、日本が「調整」のための努力をしているという態度を示すことが、韓国世論に対してだけでなく、国際世論に対して重要になる。

「調整」努力は、国際法の観点からは日本の立場が正しいということをアピールする良い機会にもなる。

国際法と国内法は、2つの別個の法体系である。国際法の観点から見て納得できない国内裁判所の判決であっても、その判決が出た事実から目を逸らすことができないのは仕方がない。

だからこそ、国際法に依拠した主張を徹底したうえで、韓国司法の決定を問題として認識し、「調整」を提案して、問題解決に努力している姿勢を見せるべきだ。

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