2019年08月13日 公開
2022年07月08日 更新
写真:大坊崇
7月の参院選では、与野党の構図に大きな変化はみられなかった。そのなかで辛坊治郎氏は、「安倍政権最後の課題」は憲法9条の改正だと説く。またホルムズ海峡におけるタンカー防衛の有志連合について、一部野党が唱える批判の矛盾を指摘。日本の重大論点を徹底解説する。
※本稿は月刊誌『Voice』(2019年9月号)、辛坊治郎氏の「左派ポピュリズム台頭の萌芽」より一部抜粋・編集したものです。
聞き手:編集部(中西史也)
――参院選を乗り切った安倍首相の通算在職日数は、8月24日に佐藤栄作を抜き歴代2位に、11月20日には桂太郎を超えて憲政史上最長となります。安倍首相が自民党総裁としての任期である2021年9月までに行なうべき、「最後の課題」は何でしょうか。
【辛坊】 やはり、いまだ実現できていない憲法改正でしょう。とりわけ9条への自衛隊明記です。ただ、いまの見立てでは、衆参両院で3分の2の賛成を得て国会で発議し、国民投票で過半数を得ることはかなり難しい。
現在、衆議院では自民、公明、維新、一部無所属の「改憲勢力」が3分の2を確保していますが、参議院では今回の選挙の結果、3分の2まで4議席届いていません。
改憲に前向きな議員もいる国民民主と折り合いがつけられれば、物理的な議席は足ります。しかし、各党の調整を取り付けて条文案をまとめるためには、そうとうな政治力が必要です。
公明党は元来、憲法改正には懐疑的ですから、簡単には乗ってこないでしょう。
――2015年の平和安全法制で、集団的自衛権の行使を限定的にとどめることで自公が合意したように、抑制的な憲法改正案で折り合うことはないでしょうか。
【辛坊】 もし各党との合意が得られる素地ができても、国民投票で過半数を得られるほど憲法改正の機運を高めるのは難しいと思います。
安倍首相は自らの任期中に改憲を実現したい旨を語っていますが、本気でやる気があるのかどうも煮え切らない。
憲法9条の改正は自衛隊明記案以外に、戦力の不保持と交戦権の否認を記した2項の削除案など、自民党内でも意見が分かれています。
――一方で、立憲民主は安倍政権での改憲に反対、共産党は改憲の議論にすら応じない姿勢を示しています。
更新:11月21日 00:05