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辛坊治郎 「自民党は“大阪問題”の解決案を示せなかった」

2019年05月08日 公開
2020年10月08日 更新

辛坊治郎(大阪綜合研究所代表)

辛坊治郎聞き手:編集部(中西史也) 写真(大坊崇)

松井一郎・吉村洋文両氏の圧勝に終わった大阪ダブル選挙――。堺市長であり、大阪都構想に反対していた竹山修身氏が辞職し、池田市長には維新公認の冨田裕樹氏が就任するなど、維新に追い風が吹いている。関西を長年ウォッチしてきた辛坊治郎氏は「大阪・春の陣」をどう見るのか。「維新大勝」の深層を徹底解説。

※本稿は月刊誌『Voice』(2019年6月号)、辛坊治郎氏の「本格始動した大阪都構想」より一部抜粋・編集したものです。

 

「維共共闘」を訴えた自民党の愚かなポスター

――4月7日の大阪府知事・市長のダブル選挙で、知事選は前大阪市長の吉村文氏、市長選は前大阪府知事の松井一郎氏が当選しました。大阪維新の会公認の両氏が大勝を収めたわけですが、この選挙結果をどう受け止めましたか。

【辛坊】 知事選では予想どおり、無所属で元大阪副知事の小西禎一氏に対し、吉村氏が圧勝しました。

一方で市長選は、告示直前の世論調査で、無所属で元自民党大阪市議の柳本顕氏と松井氏の得票が拮抗している数字が出ていた。

前回(2015年)の大阪市長選では、トップの吉村氏が約59万票、2位の柳本氏が約40万票という結果だったわけですが、公明党は支持を明確にせず、自主投票でした。

しかし今回の市長選は、反維新に自民党や共産党のみならず、公明党も加わったため、大きな組織票が入ります。それだけに、府知事を務めてきた松井氏でさえ今回の市長選では危ないかもしれない、と私も思っていました。

ところが蓋を開けてみると、トップの松井氏が約66万票、2位の柳本氏が約47万6000票と、大きな差がつきました。

なぜ維新の松井氏と吉村氏がここまで支持を伸ばしたのか。端的にいえば、自民党が作戦を間違えたからだと思います。

選挙期間中、自民党大阪府連が作成したインターネット用ポスターが注目を集めました。安倍晋三首相の顔写真を添えて、「自共共闘? 維共共闘の間違いでしょ!」と訴える内容です。

自民党支持層のなかで「維新を潰すために共産党とまで手を組むのはいかがなものか」という声が高まり始めたことに、自民党府連が危機感を覚えたのでしょう。

ポスターの文面には、維新が共産党を含む野党勢力と共に2019年度予算案に反対したから「維共共闘」だ、と書かれています。しかし、与党の予算に野党が反対するのは当たり前で、維新と共産が共闘しているという話ではない。

それを見た大阪府民・市民は、醜い弁解をしている自民党のポスターを見てむしろ、大阪では「自共共闘」であることを思い知ったことでしょう。こんな愚かな広告を考えた自民府連は、そうとう焼きが回っていると思います。

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