その中国が、日米両国からの莫大な投資を受け入れて「改革開放」にばく進する一方、ソ連は計画経済が破綻して崩壊しました。
中国の経済成長に必要な資金はニューヨークからの投資であり、国際的な金融機関が中国共産党と手を握りました。彼らから見て日本はむしろライバルであり、ジャパン・パッシング(日本無視)といわれたのが90年代、クリントン政権時代です。
自信を得た中国は、21世紀に入ると経済力を軍備拡大に転用し、南シナ海や東シナ海(尖閣海域)への露骨な勢力拡大を開始しました。特許侵害をものともしない中国製品が大量に生産され、米国や日本の製造業に大打撃を与えました。
安全保障上も貿易の面でも脅威と化した中国に対し、事なかれ主義のオバマ政権は、ほとんど何も手を打ちませんでした。このような流れに「待った」をかけたのがトランプ政権でした。トランプは国際金融資本ではなく、米国の製造業とそこで働く労働者を支持基盤としています。
トランプの主張は明快です。
「NATO諸国も、韓国も、日本も、自分の国は自分で守れ。もうこれ以上、米軍に頼るな」
大阪G20の前後にトランプが繰り返し語った「日米安保条約は不公平だ」という発言は、言い間違いでも誤解でもなく本音です。祖父の岸信介が着手した日米安保改定の完遂を、安倍首相に呼びかけたのです。もう、ジャパン・ハンドラーズを使った飼い慣らし政策はやめるということです。
さまざまな事情で実家から出ずにそのまま中年を迎えた男性を、「子供部屋おじさん」というそうです。戦後日本はいわゆる「子供部屋おじさん」状態でした。
国際紛争から目をそらし、国連憲章が定めた集団安全保障にも参加せず、米国というビッグ・ダディに守ってもらい、米国市場という「食卓」まで用意されてきたのです。
その米国もいまや疲弊し、「世界の警察官」という大任を果たす余力がなくなってきました。「アメリカ・ファースト」を掲げるドナルド・トランプが大統領に選ばれたことは、一つの時代が終わったことを象徴します。
トランプはNATO諸国に対しても米国を頼らず、応分の負担をすべきだと苦言を呈しています。
「日本は12歳の子供だ」かつてマッカーサーはこういいました。ビッグ・ダディはもはや年老い、日本に対しても「お前はもう12歳じゃない。オレの仕事を助けてくれ」と言ってきたのです。
「オヤジ、今まで世話になった。オレももう一人前だから、仕事を任せてくれ。沖縄は自衛隊が守る。米軍は引いてもらって構わない。何ならグアム島も、フィリピンも任せてくれ」
日本がこう答えたら、米国はどう出るでしょう。
トランプなら、「ああ、任せる」といいそうです。
更新:11月24日 00:05