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深まる「米中冷戦」、日本生存のヒントは地政学にある

2019年06月21日 公開
2024年12月16日 更新

茂木誠(駿台予備学校世界史科講師)

茂木誠

<<米中覇権争いが本格化する中、日本は中国、韓国、北朝鮮とどう対峙すればよいのか?

人気世界史予備校講師の茂木誠氏が上梓した『日本人が知るべき東アジアの地政学』(悟空出版)では、欧米のエリート層が学ぶ『地政学(地理+歴史+イデオロギー)』を武器に、日々のニュースだけでは見えてこない国際情勢の本質を読み解く。本稿ではその一節を紹介する。>>

※本稿は『日本人が知るべき東アジアの地政学』(悟空出版)より一部抜粋・編集したものです。

 

地政学でなぜ国際情勢がわかるのか

明治維新以降、日本は清、ロシア、中華民国、そして米英をはじめとする連合国と戦争してきました。戦後は西側陣営の一員として米ソ冷戦を「戦い」、これに打ち勝ちました。

日本とドイツの敗戦で平和な世界がやってきたのかというと、現実はまったくそうではありません。

9・11同時多発テロ事件やアフガニスタン派兵、イラク戦争、対IS作戦に代表される「対テロ戦争」が続き、ロシアやイランが中東に勢力を拡大しています。

東アジアでも、北朝鮮による核・ミサイル開発、韓国では親北朝鮮派の文在寅政権の誕生、そして中国の覇権国家化に対する米中貿易戦争が火ぶたを切り、「米中冷戦」とも言える状況になってきました。

長い目で見れば、国家間の対立は切れ目なく続いているのです。

地政学ではそもそも、対立が起きることを当然と考えます。国家も民族も宗教も、人間という生き物が集まった集団であり、生き物の根本的な行動原理は「生存競争」だからです。

深く考えるまでもなく、生命をつなぐためには獲物をとって食べなければなりませんし、作物を育てるには水資源や肥沃な土地が必要になります。周囲に自分の行動を邪魔し、縄張りを侵害する集団がいれば敵視し、排除することが当然のこととなります。

こうした流れを国家に当てはめ、生命体のように考えるのが、「国家有機体説」なのです。古くは古代ギリシアの哲学者プラトンが唱え、19世紀のドイツ統一期に主流となった国家観です。

明治日本はドイツ憲法学を導入しましたから、大日本帝国憲法の解釈にも国家有機体説が採用されました。これが美濃部達吉博士の「天皇機関説」なのです。

人間が生きている以上、集団や国家が生まれ、近くにいる集団や国家同士には軋轢が生じるのは当たり前、というのが国家有機体説から導かれる結論です。

地政学では、この原則に「地形」という要素が加わります。ある集団が占拠している場所が、敵対勢力から見て地続きなのか、川や山を挟んでいるのか、海を隔てているのかなど、さまざまなケースが考えられます。

同じような地理的条件であれば、たとえ民族が異なっていようと、同じような行動パターンをすることが多くなります。

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