駿台予備校の世界史講師として活躍しつつも、多数のベストセラーを世に送り出し注目を浴びる茂木誠氏。その茂木氏が"古人類学による戦争の起源"から"21世紀の東アジアの未来"までをわかりやすく凝縮した著書、『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』(TAC出版刊)を上梓した。
空気に流されず、日本人が本当にしなければならないこととは何かを問う同書では、日本人は"戦争"とどう向き合ってきたのか? そもそも人類はいかにして"戦争"を回避しようとしてきたのか? など、「戦い」を通じて「秩序」を作り上げてきた人類の歴史の核心に迫っている。
ここでは同書でも触れた、安保反対闘争の騒乱後から現代に至るまでの日米の関係と、現在の日本が置かれている立場について語る。
((新)日米安保条約は自然成立したものの、安保反対闘争などの社会的混乱の責任をとって岸信介首相が辞任した後に)池田勇人内閣は、「労働運動の沈静化には経済成長が効果的」と考え、所得倍増計画をぶち上げます。若者たちはヘルメットをスーツに着替え、「企業戦士」となって高度経済成長を支えました。
日本は先進工業国(G7)のメンバーとなり、米国の製造業に脅威を与える存在にまでなりました。70年の安保条約自動延長は静かに行われ、10年前のような狂騒は姿を消しました。
いわゆる「知日派」と呼ばれる米国人の多くは、日本を飼い慣らしてうまくコントロールすることをみずからの使命と考える人々(ジャパン・ハンドラーズ)でした。
長く駐日大使を務めたエドウィン・ライシャワー、クリントン政権の国防次官補ジョゼフ・ナイ、ブッシュJr政権の国務副長官リチャード・アーミテージ、CSIS(戦略国際問題研究所)の日本部長マイケル・グリーン……。
そのカウンターパートナーとなった歴代自民党政権はズルズルべったりで対米従属を続け、米国の意に反する政権は短命に終わりました。
米国に先駆けて日中国交樹立を成し遂げ、米系の国際石油資本から脱却して独自の資源外交を行った田中角栄は、週刊誌に金脈問題が暴露されて総辞職し、さらにはロッキード事件で告発されます。
しかし田中はめげず、中国進出を望む企業からの献金を資金源として自民党内に「田中派」を作り上げ、宏池会・清和会を押しのけて最大派閥に発展させます。親米政権を支える自民党の内部に、今度は親中派が出現したわけです。
・対中融和派(田中派)…田中角栄→竹下登→金丸信→小沢一郎
ただし、米国はソ連を主敵とし、中国には融和策を取ったので、日米関係に生じた亀裂は小さなものでした。むしろ、米国と中国とで日本を「共同管理」しようという雰囲気でした。
71年に訪中したキッシンジャー大統領補佐官は周恩来首相との会談で、「在日米軍が撤退すれば、日本は核武装し、軍事大国化するでしょう。これに対抗するため米・中の伝統的な同盟関係が復活するでしょう」と語っています。
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更新:12月02日 00:05