2019年07月17日 公開
2022年07月08日 更新
外交については、日本がどれだけ自覚的に戦略的ダイヤモンドの一翼を担うかが問われている。
中国とは絶えず対話のチャネルを維持し、危機管理のメカニズムを構築しなければならないし、環境問題など協力できる領域を拡大しなければならない。
だが、中国の国防費は過去30年間で50倍に膨れ上がっており、これに対処するには、防衛力の整備強化をはじめとして、日本には相当の努力が必要である。
トランプ政権は、同盟諸国に国内総生産(GDP)2%の国防費支出を求めている。
武田康裕(防衛大学校教授)の最近の研究によれば、日本が対米自立のコストと防衛コストの均衡を図る最低ラインは、 GDP比1.3%程度だという。これでも防衛費を1兆6588億円増額しなければならない(武田『日米同盟のコスト』亜紀書房)。
また、トランプ政権が「アメリカ・ファースト」に固執し、法の支配や自由貿易、人権、多国間協調などの規範に無頓着である分、日本はこれらの規範の形成と強化に外交努力を払わなければならない。
トランプ大統領はシーレーン防衛の責任分担に言及したが、これも同盟のマネージメントの問題であるとともに、航海の自由という国際法上の原則維持の問題である。これこそ、令和の平和外交の真価である。
安倍首相は国際外交に習熟し、先に大阪で開かれたG20サミットでも議長としての存在感を示した。
アメリカとイランの対立でも、安倍首相は自らテヘランに乗り込んで仲介外交を試みた。この折に、日本のタンカーが攻撃されたことから、安倍仲介外交は失敗だったという声もある。
だが、アメリカとイランの対立が、たった一度の首相訪問で簡単に緩和されるはずがない。長期的な外交努力が必要であり、それこそ積極的平和主義というものである。
タンカーを攻撃したのが、緊張緩和を望まないイラン国内の一部勢力(たとえば、革命防衛隊の造反分子)の仕業だったとすれば、それだけ安倍仲介外交の可能性が意識されていたということである。
安倍首相への個人的な好悪の感情や政局的判断を超えて、顔の見える令和の積極外交を支える覚悟と忍耐が、われわれに求められていよう。
更新:11月22日 00:05