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LGBT論争に潜む憲法学者のダブル・スタンダード

2018年09月12日 公開
2022年07月08日 更新

村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

村田晃嗣写真:吉田和本

 

日本で同性婚を認めるには憲法改正が必要

アメリカでは2015年に、すべての州で同性婚を認める連邦最高裁判決が下った。18年8月時点で、世界で24カ国が同性婚を認めており、19年にはオーストリアと台湾がこれに続く。とくに、後者はアジアで初となる。

G7加盟国で同性婚が認められていないのは、日本とイタリアだけである。ただし、イタリアでも、結婚に準じる権利を同性カップルに認める法律が16年に成立した。

同性婚や同性パートナーシップが認められている国の人口は世界の約20%で、そのGDP(国内総生産)合計は世界の60%近くになる。

日本では9月20日の自民党総裁選で安倍晋三首相の三選がほぼ確実と見られるが、安倍氏は憲法改正、とりわけ9条の改正に意欲を燃やしている。その日本国憲法の24条1項は以下のとおりである。

「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」。

他の先進国のように日本でも同性婚を認めるには、憲法を改正しなければならないように読める。

ところが、その必要はないと主張する憲法学者も少なくない。たとえば、安保法制批判で名を上げた木村草太氏がそうである。

旧民法の下では、女性が時には親に結婚を強いられ、家庭のなかで夫より低い地位に甘んじていた。こうした戦前の反省がこの条文の沿革であり、ここでは「両性」と異性婚についてしか触れておらず、同性婚を明示的に禁止してはいないというのである。

なるほど、気鋭の憲法学者らしい、「目から鱗」の解釈である。

さらに、「両性」は男と男、女と女でもいい、と主張する法律学者もいる。それなら、「両性」ではなく「両者」とすればいいではないか。「夫婦」とは男女間の関係ではないか。

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著者紹介

村田晃嗣(むらた・こうじ)

同志社大学法学部教授

1964年、兵庫県生まれ。同志社大学法学部卒業。98年、神戸大学博士(政治学)。99年、『大統領の挫折』(有斐閣、1998年)でサントリー学芸賞、2000年、『戦後日本外交史』(共著、有斐閣、1999年)で吉田茂賞を受賞。13年4月から16年3月まで同志社大学学長を歴任し、現職。著書に『レーガン』(中公新書、2011年)など。


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