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「TOEICは300点」シリコンバレーで働く人のスタート地点

2019年04月28日 公開
2020年07月21日 更新

酒井潤(シリコンバレー・エンジニア)

まず、ハワイで起業

このとき、小さなころから大切にしていた「トップの世界に身を置け」という言葉を思い出し、初めてシリコンバレーを意識しました。

しかし、当時のTOEICのスコアは300点台で、駐在員として海外に行くためには、同期との競争に勝ち残る必要があった。あまりに狭き門に感じられた上に、時間がかかりすぎると思いました。

そこで自力でアメリカに行くしかないと考えましたが、1番のハードルはビザが下りないこと。そこでまず、ハワイで起業することにしたのです。

会社はハワイで登記し、私自身は日本にいる、という形をとりました。英語と経営の両方を勉強できるだけでなく、利益が挙がれば、自分自身に「投資家ビザ」を出すという形で、アメリカに滞在することができます。

加えて、当時日本で起業する場合、資本金として1000万円が必要だった一方、アメリカでの起業は1000ドル(約10万円)で可能だったのも大きな理由でした。

「ハワイに本社がある」というと、いろんな経営者が興味をもってくれました。一緒に仕事をすることもできたのです。当時を振り返ってみて思うのは、「土台に乗ること」の大切さ。

アイドルをめざす人は田舎の道を歩くより、原宿で歩くほうがスカウトされる可能性は高くなるとイメージすれば、理解しやすいかもしれません。

このとき、意識していたのは「スプーン1杯のリスク」を取ることでした。この言葉は、マックス・ギュンター(英国生まれの作家、投資家)の『運とつきあう』(日経BP社)という本に記述されています。

メディアに取り上げられるのは「大きなリスクをとって大成功している人」ですが、このようなタイプは破産など、大失敗する可能性も高い。そうした失敗も大々的に報道されるので、多くの人は「ああはなりたくない」と感じて、リスクをとれなくなってしまうことがあるのです。

しかし、「スプーン1杯のリスク」を賭けて挑戦すれば、たとえ時間はかかっても、着実に成功への道を歩める。

逆に、リスクを賭けなければ後退しかない。そのように考えることで、ハワイでの起業という思い切った決断もすんなり下すことができ、次のステージに進めました。

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