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米中激突、トランプは第二のレーガンになる?(石平&福島香織)

2018年10月30日 公開
2023年01月11日 更新

石平(評論家/拓殖大学客員教授)

トランプと習近平の思わぬ「合作」

 今夏から秋にかけて、中国では政情が急速に不安定化しています。それは習近平政権が抱えるアキレス腱(急所)がもろに影響しているでしょう。すなわち、習近平の個人独裁と側近政治です。

江沢民政権や胡錦濤前政権において、中国は集団的指導体制を採用してきましたが、習近平は軍事のみならず、外交や経済などすべての権力を掌握し、自ら判断する体制を敷いてきました。

2017年10月の党大会でも政治局常務委員に抜擢されたのは、彼の幼なじみや旧友であり、まさに“お友達内閣”です。その常務委員たちは国際的な視野などもっておらず、国家主席のイエスマンにしかすぎない。

習主席の意向を忖度して、都合のよい情報ばかりを上げているようです。そのため、対米外交の失敗に象徴されるように、判断に狂いが生じている。

トランプに対しては、ビジネス上の利益さえ与えれば丸め込めると考えていた節があり、思い違いも甚だしい。

トランプはお金はなんぼでももっていますから(笑)、むしろ歴史に名を残すような偉大なことを成し遂げたい願望のほうが強いでしょう。彼が尊敬するレーガン大統領は冷戦に勝利して旧ソ連を解体に追い込んだわけですが、それと同じ事を考えているかもしれない。

映画俳優出身のレーガンがホワイトハウスにとってはアウトサイダー(部外者)だったように、同じくアウトサイダーであるトランプの考えは、従来のアメリカのエスタブリッシュメントの論理では推し量れない。ましてや中国にわかるはずがないのです。

当面のあいだ、習近平の独裁は続きそうに見えますが、福島さんのいうように、今度の四中総会で王滬寧の首を切って胡春華を最高指導部に入れる可能性もあります。側近が入れ替わることで、独裁者の権力にも微妙な綻びが生じるでしょう。

政権発足後の約6年間、習近平政権は昇龍の勢いでした。しかし、アメリカとの貿易戦争を境に、その気運は終わろうとしています。反習近平勢力は政権のさらなる失策を待ち、様子をうかがっている状態です。

鄧小平が主導した「改革開放」から40年以上、上り坂を走ってきた中国にも転換点が訪れています。後世の歴史家は、トランプ大統領と習主席の「合作」によって中国の凋落が始まった、と見なすかもしれません。

(本稿は『Voice』2018年11月号、石平氏&福島香織氏の「安倍総理、これはいっちゃダメ」を一部抜粋、編集したものです)

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