2018年10月30日 公開
2023年01月11日 更新
米中貿易戦争の激化に国内からの批判など、習近平政権が窮地に立たされている。一方、トランプ大統領は思わぬ形で「第二のレーガン」をめざしていた。11月6日のアメリカ中間選挙が近づくなか、中国問題に詳しい石平氏と福島香織氏が、米中衝突の本質を説く。
石 トランプ大統領は、11月にパプアニューギニアで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議を欠席すると発表しています。習近平主席はAPECを機に、アメリカと貿易戦争について首脳対話を求めるつもりだったのでしょうが、梯子を外された格好です。
こうした一連の外交における失策に対して、毎年8月に中国共産党幹部や長老たちが河北省の避暑地・北戴河で非公開に行なう「北戴河会議」で批判の声が上がった、といわれていますね。
福島 ご指摘のとおり、北戴河会議のメーンテーマは、対米政策の失敗に関する責任問題だったと思います。しかし、それを直接、習主席に質すのは難しい。
そこで代わりに批判されたのが、政治局常務委員で党内序列5位の王滬寧でした。政権の理論的支柱として、一帯一路や対米外交の方針を立案した人物です。
もちろん、外交政策の最終的な決定権は習近平にありますが、そのシナリオを描いた王滬寧がスケープゴートにされたわけです。
じつは習政権に反旗を翻す動きは、北戴河会議の前から各所で広がっていました。
7月4日、29歳の女性が一党独裁反対を叫んで習近平の写真に墨汁を掛ける「墨汁事件」が起きた。
さらに同月9日、12日、15日の3日間、共産党機関紙『人民日報』の一面に「習近平」の文字を含んだ見出しが1つもないという事態が発生しました。習主席にまったく言及しない紙面がトップに何度も組まれるのは、政権発足以来初めてであり、“官製メディア”ですら反政権の動きが見て取れるのです。
北戴河会議で習近平を決定的に追い込むだけの動きはなかったものの、今秋に開かれる見通しの四中総会(19期中央委員会第4回総会)で、側近の王滬寧が何らかの理由で政治局常務委員を外され、「ポスト習近平」と目される胡春華を後継者に出す声も聞かれています。
胡春華は共青団(中国共産主義青年団)出身で、習近平との対抗派閥を形成する李克強に近い人物です。習近平外交の失敗は、これから内政面でも徐々に影響が出てくるでしょう。
更新:11月21日 00:05