2018年06月15日 公開
2018年06月15日 更新
牟田 もう1点、旅行業が永続的に繁栄するには、新しいお客さまを獲得していく「成長拡大戦略」と同時に、リピーターを増やす「安定戦略」を考えなくてはいけません。
矢島 成長拡大戦略に関して、現時点で多店舗・多地域展開を図っていこうとは考えていません。むしろ今後は、事業を徐々に集約していく予定です。
一方、安定戦略という面では、お客さまの利用形態に合わせた展開を進めています。池の平ホテルは小学生や幼稚園生のお子さんをもつファミリー層に多く利用いただいていますが、一度利用して気に入れば、友人との旅行や社員旅行として再び来訪していただけるかもしれません。
そこで私どもは、お客さまの利用形態に合わせて、十人十色というより「一人十色」のプランを提案しています。
牟田 たしかに池の平ホテルには、親子3世代で寛げる露天風呂付きの大部屋があると思えば、「仮面ライダーエグゼイド」や「魔法つかいプリキュア!」のキャラクタールームがあったりと、どんな家庭でも満足できる部屋が揃っていますね。
矢島 さらに先日、赤ちゃん・お子さん連れでも安心して宿泊できるホテルとして、「ウェルカムベビーのお宿」(ミキハウス子育て総研)の認定をいただきました。乳幼児のいるご家族が旅行に出掛けるとなると、どうしても荷物が多くなります。
そこで、子供さん連れでも気軽に足を運んでもらえるように、おむつやタオルなど育児に必要なものをすべてホテル内に用意しました。さらに、お子さんと一緒に入れる露天風呂も併設されています。
人口の減少とともに家族の形態もさまざまに変化していますが、まだまだできることはあります。メインとなる顧客層のニーズをじっくりと深掘りして、お客さまにサービスを提供し続けることが、増客の近道だと思います。
牟田 徹底的に商品を磨くことは、経営において忘れてはならない大原則です。ちなみに、リピート客に向けては何か特別なサービスを行なっていますか。
矢島 たとえば、長野県在住の50歳以上の方が入会できる「おらほ倶楽部」という会員サービス。「おらほ」とは信州弁で「私のもの」という意味です。自宅にいるようにホテルで寛いでもらいたい、というコンセプトで始めたのですが、格安で宿泊できることもあり、好評です。オプションで麻雀卓やマッサージチェアなどもご用意できます。
牟田 文字どおり「私たちの部屋」で過ごせるわけですね(笑)。友人と温泉に入りお酒を呑みながらじっくりお喋りしたい、という高齢者にはぴったりだと思います。
利用用途によって細かいセグメントを分けたダイレクト・コミュニケーションは今後、重要な営業手段です。
そういえば以前、ほかの家族連れと一緒にホテルを利用したら、温水プールやボウリングの利用券をたくさんいただきました(笑)。結局使いきれず、「もったいない」といって、リピートしていましたよ。
矢島 本当ですか! じつは、有効期限のないクーポンを発行して「もっと長く滞在したい」と後ろ髪を引いていただけるような営業面の工夫をしているんです。これからも、ご年配からお子さままで3世代にお越しいただけるホテルの魅力づくりを進めていきたいと思います。
更新:11月22日 00:05