2018年04月19日 公開
2019年02月13日 更新
私自身も前川氏に関しては、直接の面識はありませんが、あまりいい思い出がありません。
2005年のことです。当時、文科省初等中等教育局初等中等教育企画課長だった前川氏が、2004年に発足した規制改革・民間開放推進会議(以下、規制改革会議)に出席して問題を起こしたことがあります。そのころ、私は財務省から竹中平蔵内閣府特命担当大臣の補佐官として内閣府に移っていましたが、「ある会合に文科省の前川課長が出席して、『文科省側には責任がない。すべてそちらで調査しろ』などと変なことをいってきて、紛糾した」と内閣府の人間が教えてくれたのです。
その会合の議事録が公開されています。2004年7月12日に開かれた、「第十四回教育ワーキンググループ」の議事録です。
(http://www8.cao.go.jp/kiseikaikaku/old/minutes/wg/2005/0712/summary050712_01.pdf)
規制改革会議側からは、草刈隆郎議長(日本郵船会長)、白石真澄委員(東洋大学経済学部教授)、安念潤司専門委員(成蹊大学法科大学院教授)、福井秀夫専門委員(政策研究大学院大学教授)が出席。一方、文部科学省からは、前川喜平氏(初等中等教育局初等中等教育企画課長)ほか3名が出席しています(いずれも肩書きは当時)。
当日の議題は、「教員免許・採用制度について」「学校選択制について」でしたが、様々なやりとりのあと、委員から次のような問題提起がなされました。
「我々は日本の教育制度を議論しているわけです。日本の現に行われている養成制度や免許制度の効果測定について、実証的で科学的なものを我々は寡聞にして一度も見聞したことがございませんので、それは文科省の責任できちんと調べていただくべきものだと思います。次の質問ですが……」
ここで前川企画課長が「ちょっとお待ちください」と話を遮ります。
「ちょっとお待ちください。もし今の教員免許制度に意味がないとか、必要がないとおっしゃるのであれば、そちらの理由を挙げていただきたいと思います」
それに対して、委員がこう答えました。
「全然違います。必要があるかないかを議論するデータがないということなんです」
すると前川企画課長は、驚くべきことを言い出すのです。
「それを、そちら(原文は、規制改革会議委員の個人名)に出していただきたい」
この発言は、もちろん委員から、
「文科省は教育に責任を持つ中央官庁です。教育について自らやっていることについて論証していただくのはあなた方の責任であって、我々は説明を伺う権利がある」
と、たしなめられました。
しかし、前川企画課長はすぐに重ねて「疑問を提示されているのであれば、疑問を提示するだけの理由を出していただかなければ我々は答えられません」と返答。
委員たちから「エビデンスがないものを初めから信じるなどというのはばかげたことでしょう」「もともと証拠もないことを中央官庁としてやっておられるんだったら、それ自体ゆゆしき事態ですよ」と猛反論されています。
それでも前川企画課長は執拗に「その疑問の根拠を出してください」と何度も、何度も、繰り返したうえで、
「不十分な根拠で言い掛かりを付けているとしか思えません」
という発言を口にするのです。
この発言を聞いた委員から、もちろん強い指摘がなされました。
「そういうやくざの言葉遣いみたいなことはやめていただきたい。言い掛かりではないですよ。責任を持ってやるべき官庁が自らの施策の根拠を示すのは、国民に対しても責務でしょう」
この真摯な指摘に対しても前川企画課長は、なおも「それだけの疑問をおっしゃるのであれば……」と述べ続けます。
さすがに、委員も次のように語りかけます。
「とにかくやっておられるのにデータも持たずに、効果の測定もせずに、それを正しいと言って、それについて根拠を問われたら、おまえたちが示せと開き直るような、そういう中央官庁の職員の在り方そのものを問うているのです。全くおかしいと思います。自らやっていることについて国民にデータについても示せない、あるいは証拠についても示せない。そちらがやれ。そんなばかな官庁はほかで聞いたことがない。恥ずかしいと思っていただきたい」
決定的な言葉ですが、前川企画課長は挫けるどころか、まだまだ同じ発言を繰り返します。「疑問をおっしゃるからには、疑問の根拠をおっしゃってください」。
このやりとりは、誇張して書いているのではありません。実際の議事録では、同様のやりとりが、もっと続きます。
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更新:11月22日 00:05