2018年04月06日 公開
2018年05月14日 更新
佐川氏には森友学園への用地売却に関して2回、「勉強する」チャンスがあった。1回目は『朝日新聞』大阪版に森友学園への土地売却に関する記事が最初に出た2017年2月9日。2回目は、同月に行なわれた国会答弁の前である。
まず1回目については、上記『朝日新聞』大阪版に「財務省近畿財務局が学校法人に払い下げた大阪府豊中市内の国有地をめぐり、財務局が売却額などを非公表にしていることが分かった」と報じられた。
この時点で、局長の立場であれば「何が起きているのか」とアンテナを張るべき局面である。大阪版とはいえ、財務省の仕事が新聞で問題の俎上に載っているのだから、本省の課長補佐であれば詳細を調べようとするし、局長は決裁文書を取り寄せようと思わなければおかしい。
2回目については、同年2月24日に財務省理財局長の立場で行なった衆議院予算委員会の答弁前が問題だ。通常、本省の局長が国会で答弁する場合は前日に課長補佐が資料を基に答弁を書き、課長がチェックして想定問答として文書課に提出し、登録する(普通の課長であれば、この時点で局長の自宅にFAXなどを入れておく)。翌朝、局長が来て答弁を読み、レクチャーを受けてから国会答弁に向かう。簡単な答弁内容なら見るだけでわかるし、複雑な場合や土地勘がなければ課長補佐を呼び、質問をする。
今回のケースであれば「近畿財務局の決裁書、もっているよな?」と尋ねて、なければ取り寄せさせるのが普通の行動だ。決裁文書と異なる記載があれば、さらに調べさせる。もし国会当日の朝に間に合わなければ、答弁の時間までに間に合えば読み、間に合わなければ「基本的には」など、言質を取られないような表現で抽象的に答えるのが鉄則だ。
にもかかわらず佐川氏は、国会答弁でいとも簡単に「土地の価格交渉はない」と断言してしまった。
(本記事は、4月10日発売の『Voice』2018年5月号、高橋洋一氏の「財務省『空前絶後』の失態」を一部、抜粋したものです)
更新:11月19日 00:05