Voice » 政治・外交 » 中道改革連合は誰のための新党だったのか? 公明党の選挙戦略と立憲民主党の誤算

中道改革連合は誰のための新党だったのか? 公明党の選挙戦略と立憲民主党の誤算

2026年08月28日 公開
2026年08月28日 更新

泉房穂(参議院議員、元明石市長),福田充(日本大学危機管理学部教授)

選挙のリアル

2026年総選挙を前に、公明党と立憲民主党は新党「中道改革連合」を結成しました。
しかし、その狙いは政権交代への布石だったのか、それとも党勢維持を優先した戦略だったのでしょうか。

本稿では、元明石市長の泉房穂氏と日本大学教授の福田充氏が、公明党の連立離脱と新党結成の背景、比例名簿の仕組みや選挙戦略を詳しく分析。さらに、地方選挙や参議院選挙への影響を踏まえながら、中道改革連合の課題と、日本政治における野党再編の行方を多角的に読み解きます。

※本稿は、泉房穂、福田充著『国民のお金はどこに消えた?』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

新党結成に動いた公明党の思惑 

【福田】2025年10月、公明党が高市自民党との連立を解消し、下野しました。その後、公明党の斉藤鉄夫代表と立憲民主党の野田佳彦代表は両党の連携を模索していましたが、26年1月に「高市首相が解散を検討」との報道が流れると連携の動きは加速し、あっという間に新党「中道改革連合」が発足しました。
中道改革連合に合流したのは衆議院の公明党と立憲民主党所属の議員でしたが、参議院で立憲と会派を組んだ泉さんは、この過程を間近でご覧になっていたと思います。こうした一連の動きについて、どう思われていましたか。 

【泉】立憲にも公明にも国民が見えていない、目先の選挙にとらわれていると印象づける大きなきっかけになってしまいました。
踏まれても蹴られても強いものにくっついていく「下駄の雪」のように、公明党は26年間、組織防衛のために自民党と連立を組んできました。しかし高市政権ができると、「いい加減にしろ」とばかりに離れていった。でも内心は、高市さんじゃない自民党になったら戻りたい、という思いがあるのだろうと察します。

公明党は、いずれ再び自民党と組むという選択肢も念頭に置いているでしょうが、高市さんとは組めないので、自民党に高市路線ではないほうに戻ってもらいたいのではないでしょうか。しかし、戻るまでのあいだ、党を維持しなければいけない。そのための手段としての新党結成だったのではないか。そういう意味で、中道改革連合の急な結成は、明らかに組織防衛を意図したものだったと感じます。
実際、公明党に関しては、この目的を達成しました。

自公連立時代の2024年の総選挙で、公明党は小選挙区「4」、比例代表「20」、合わせて「24議席」を獲得しています。しかし、連立を離脱した今回、公明党単独では小選挙区で勝ち目はありませんでした。
そこで中道改革連合を結成した公明党は小選挙区から撤退して、候補を立てませんでした。その代わりに前回小選挙区で当選した4人を比例に回し、前回の比例当選組20人に加え、さらに4人を新たにプラスして、計28人を比例名簿の上位に並べました。結果は、28人全員が当選です。今回の選挙で一番勝ったのはもちろん自民党ですが、その次は公明党です。

もし公明党単独だったら、小選挙区は全滅で比例も20に届かなかったでしょう。それが中道をつくったことで、前回の24議席を28議席に増やすことができたのですから、公明党としては「してやったり」でしょう。

 

立憲と公明は地方議会・参議院でも合流するのか 

【福田】これから2027年には統一地方選挙が、2028年には参議院選挙がありますが、その2つの選挙では、立憲民主党と公明党はどのように戦うことが予想できますか。 

【泉】立憲民主党と公明党は、2027年の統一地方選までは、地方議員は中道改革連合に合流しないで、独自候補を立てると表明しました。立憲側にすれば、中道への合流はとりあえずもういい、ということでしょう。最近では、「合流しないのも選択肢としてある」との発言が報道されていますが、流動的な状況です。

地方議会の選挙は10人、20人を選ぶ戦いです。これまで公明の名前で戦ってきた人も、立憲の名前で戦ってきた人もいます。公明の候補は、中道に合流してもしなくても、創価学会票がついているから当選します。中道に合流すれば、立憲支持者の票も入るかもしれませんが、そうした票はあってもなくても、あまり変わらないでしょう。

立憲にとって、合流はあまり得にはならず、合流しても公明に票が流れるだけでしょう。結局、公明、立憲ともに地方議会での合流に大きなメリットは見出せません。
リアルな話、参議院での合流も立憲にメリットはないでしょう。なぜなら、合流したところで比例区の得票上位は公明の候補者が独占することが予想されるからです。
どういうことか、2025年の参議院選挙をひもといて見てみましょうか。

比例区で当選したのは、公明が4名、立憲が7名でしたが、注目すべきはそれぞれの当選者の得票数です。公明は1位が約37万票台、2位が34万、3位が32万、4位で31万の得票です。5位が29万、6位が21万と、落選した2名も20万票を超えている。
一方、7名の当選者を出した立憲は、1位の蓮舫さんこそ33万票台の得票数ですが、2位は一気に14万票、3位、4位は11万票台で、5位以下は9万票台と、10万票すら切っている。20万票を超えて名前を書いてもらえた候補者は、知名度のある蓮舫さんただ一人なのです。

参院選の比例区は名簿順ではなく、個人の得票数に応じて当選していく仕組みです。もしも公明と立憲が合流した場合、前回の選挙の結果を見ても、上位の当選者は蓮舫さんを除き、公明出身者がほぼ独占する状態になることは容易に想像できます。得票数が20万に届かない立憲の候補者は軒並み落選する可能性があるのです。

そのうえ、2022年の参院選では自民が圧勝して、立憲はボロ負けしています。このとき立憲は1人区でほとんど勝てていません。ほぼ比例か複数区での当選です。複数区では、基本的に公明のほうが有利です。もし公明の候補と立憲の候補が同じ中道の名で戦ったら、公明の岩盤支持者は当然、公明の候補に投票します。一方、立憲の候補からは浮動票が逃げていきます。結局、当選するのは公明の候補になるでしょう。

つまり、立憲と公明が参議院でも合流すると、立憲側では比例でも複数区でも現職の多くが落選することになります。だから参議院の立憲議員には、中道に合流するエネルギーは働かず、「一緒になったら、我々は落ちるじゃないか」と考えても不思議ではありません。一方で公明からは「合流するべきだ」との発言が出ています。
それが政治のリアルです。今の流れのままでは、立憲民主党が公明党と一緒に躍進する未来は描きづらいのが正直なところですけどね。

 

政治のリアルから懸け離れていた驚きの名簿 

【泉】それにしても今回の総選挙でびっくりしたのは、中道改革連合の比例名簿です。なぜあのような順位になったのか、理解不能です。
たとえば比例の近畿ブロックで中道の候補は5人当選していますが、すべて公明党出身者です。近畿ブロックだけではありません。中道の比例代表での当選者は、近畿から西ではすべて公明出身です。西日本では公明出身者がきれいに全員通って、あとはゼロ、公明のあとに名前が出てくる立憲出身者に当選は回ってきませんでした。

近畿ブロックでは前回、2024年の総選挙で、公明党は3人当選しています。ところが今回は名簿の5位までを公明にプレゼントして、全員当選しています。名簿の6位にようやく立憲出身で重複立候補の馬淵澄夫さんの名前が出てきますが、小選挙区で落選した馬淵澄夫さんは比例復活できませんでした。結局、近畿で当選した中道の立憲出身者は、京都3区の泉健太さんだけでした。

無所属の私も参議院で立憲と会派を組んでいて無関係ではないので、比例名簿には注目していたのですが、当然、公明の候補者すべてを上位に並べるなどということはせず、小選挙区で当選したことのある立憲の候補者を重複候補として間に挟んでくるだろうと予想していました。そうでなければ、立憲の候補者を選挙区で応援する動機づけが公明サイドに生まれないからです。

近畿ブロックでいえば、5位まですべて公明の候補者で独占するのではなく、4位あたりで立憲の候補者を数名、間に挟むだろうと思っていました。そうなれば、下のほうの公明の候補者を当選させるために、間に挟まっている立憲の候補者を小選挙区で勝たせようと、公明は必死になって応援したはずです。

こうやってサンドイッチのように立憲を挟むことで、公明は名簿の最後の候補者まで通したいから頑張ります。当然、そういうエネルギーが働く順位づけをするものだと思っていたのですが、まったく違っていました。中道の比例名簿は11ブロックすべてで公明出身者が上位を独占していました。

ちなみに、かつての新進党には公明党も合流していましたが、小沢一郎さんは比例名簿で公明系候補を当選ラインぎりぎりの順位にしています。小沢さんは公明党が必死に頑張るようにちゃんと考えていました。政治のリアルをわかっているのです。

ところが今回の選挙では、頑張らなくても公明系の候補は全員通ることが明らかでした。前回まで小選挙区で公明党と喧嘩していた立憲の候補を頑張って当選させようというインセンティブが、これでは働きません。
選挙後、立憲の人たちは公明の悪口を言わず感謝していますが、何がなんでも小選挙区で勝たせようとする本気の応援が展開されたわけではなかったと思います。

街頭演説をすれば公明が動員をかけて人を集め、拍手をしてくれます。立憲の候補者からすれば、100人も集まったら「たくさん来てくれてありがとう」と思うでしょう。しかし100人、200人集まったところで実際の得票はたかが知れています。

公明党の強さは、そこではありません。創価学会員が電話をかけまくって行う票の掘り起こしこそが強みです。学会員が非学会員の友人・知人に特定の候補への投票を依頼して獲得する票です。今回、公明党は全国的にそこまではやっていないのではないでしょうか。表の見えるところで、頑張っている姿を立憲側にアピールしただけの結果に終わっています。

本来、公明党の本気はそんなものではありません。死活問題になったときの最後の追い込みなど、半端ではないです。本当に自分たちの味方だと思って応援しているのか、昨日までの敵を応援する体制になっただけなのか、その違いだと思います。立憲の議員のうち、どれだけの人が、そうした内情を理解しているのか。結果として、各選挙区における立憲候補者は、公明党の比例票の積み増しに貢献しただけ、ということになってしまったのではないでしょうか。

その意味では、当時の立憲側の執行部があまりにも政治的駆け引きに対して無頓着というか、政治のリアルから懸け離れていると痛感せざるをえませんでした。それも含めての今回の結果かなと思いますね。

プロフィール

泉房穂(いずみ・ふさほ)

参議院議員、元明石市長

1963年、兵庫県明石市生まれ。東京大学教育学部卒業後、NHKやテレビ
朝日のディレクター、石井紘基氏秘書、弁護士を経て、2003年、衆議院議
員となり、犯罪被害者等基本法などの立法化に努めた。11年、明石市長に
就任。子ども施策のほか、高齢者・障がい者福祉に尽力。23年4月、任期
満了に伴い市長を退任。25年7月、参議院議員選挙に当選。

福田充(ふくだ・みつる)

日本大学危機管理学部教授(学部長)

1969年、兵庫県西宮市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。現在、日本大学危機管理学部教授(学部長)、同大学院危機管理学研究科教授(研究科長)を務める。専門は危機管理学、リスクコミュニケーション、インテリジェンス、テロ対策、災害対策ほか。
内閣官房や自治体等で危機管理に関する委員や、コロンビア大学客員研究員等を歴任。

Voiceの詳細情報

関連記事

編集部のおすすめ

国民のお金はどこへ消えたのか?「生活の安心を提供する」政治

泉房穂(前明石市長),福田充(日本大学教授)

新しい政界再編の軸はこれだ! 保守・リベラルを超える大同団結への道

泉房穂(前明石市長),福田充(日本大学教授)

なぜアメリカは9.11テロを防げなかったのか...「情報」が何の意味もなくなる時

米村敏朗(元内閣危機管理監),福田充(日本大学危機管理学部長・教授)

陰謀論者の常套句「メディアは操られている」が隠す”不都合な事実” 

福田充(日本大学危機管理学部教授)

陰謀論者は“歪んだ承認欲求”で社会を分断している

福田充(日本大学危機管理学部教授)