
中国はアメリカにとって「競争相手」ではなく、世界の安全保障を脅かす明確な対立勢力である──。
第一次トランプ政権で国家安全保障会議参謀長を務め、CIAや国防情報局(DIA)などで要職を担ったフレッド・フライツ氏は、習近平体制下の中国をそう断じる。本稿では、トランプ政権の対中認識について書籍『トランプ・高市同盟で日米は繁栄する』より解説する。
※本稿は、フレッド・フライツ、スティーブ・イエーツ、渡瀬裕哉著『トランプ・高市同盟で日米は繁栄する』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです
【渡瀬】中国と習近平について、ご意見をお聞かせください。
【フライツ】中国はアメリカに敵対する国だと考えています。アメリカの指導的立場にいる人達のなかには、中国をパートナーや競争相手として扱うべきだと述べる人もいますが、それは間違っています。
日本やフランスは友好的な競争相手です。貿易で競争し、影響力でも競争しています。
しかし、中国は競争相手ではありません。「敵(enemy)」とまでいってしまうと問題がありそうなので、この言葉は避けますが、アメリカと世界の安全保障に対する実在の脅威である対立勢力(adversary)だと考えています。
ルールを守らず、技術を盗み、不当な貿易を行なう。核兵器を増強している。技術を盗む。中国は、世界の安全保障に対する巨大な脅威となる国家です。トランプはそのように見ています。トランプ政権を支える主要スタッフもそう見ています。
今、トランプはこの脅威に対処しつつ、関係改善を試みようとしています。ある国を脅威と認識しつつも、その脅威を軽減し、友好関係を育みたい場合、非常に高度な外交手腕が求められます。これが、トランプ大統領が韓国・慶州で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で習近平国家主席と合意した理由です。米中関税戦争の休戦と、来春に中国を訪問する方針を原則合意したのです。習近平主席は米国訪問に同意し、おそらく2026年秋になる見込みです。
トランプは、取引のできる大統領です。米国と必ずしも良好な関係にないものの、共存せざるをえない諸国の首脳とも取引を成立させられる交渉人なのです。これがトランプの中国へのアプローチ方法です。
【渡瀬】中国の経済は現在、あまりよい状態にありません。中国が将来、米国にとって経済的な脅威になることはないという意見もあります。それについてどう思いますか。
【フライツ】その話は以前から聞いています。中国経済の運営がうまくいっていないこと、習近平国家主席が1980年代から90年代にかけての市場経済改革(※)の土台を崩したことで自国経済に多大な損害を与えたことも承知しています。しかし、中国は依然として重大な安全保障上および経済上の脅威です。
毛沢東路線の政策を転換し、改革開放政策を推し進め、中国は急速に経済発展した。1989年の天安門事件以後、役職を退いたが、それ以後も影響力を持っていた。レアアースの戦略的価値を重視し、大規模生産を推し進める路線を決めたのも鄧小平とされる。
最近参加した会議で、中国がアメリカのAI専門家数百人を中国に移住させるために数十万ドルを支払っていることを知りました。その目的は、彼ら技術者が中国人学生にAIを教授し、(学んだ技術で)いずれ中国がAI分野で支配的地位を確立するためです。中国が真剣な政策として行っていることに疑いの余地はありません。つまるところ北京は、外国の専門家たちに賄賂を贈ってこのようなことをやらせているのです。
(※)1980年代から90年代の市場経済改革を導いたのは鄧小平(1904―1997)である。
【渡瀬】アメリカは、脅威である中国共産党政権自体を変えるつもりでしょうか。それとも共産党政権の脅威を封じ込めようとするのでしょうか。
【フライツ】私の意見ですが、アメリカが中国の政権を変えるというのは現実的ではありません。はっきりと申し上げますが、トランプ大統領は現政権下で政権交代を主張したことはありません。トランプは、米国がこれまで政権交代を試みたことで多くの問題に巻き込まれたと考えています。政府の変革を試みる過程で、我々はあまりにも多くの兵士を失い、あまりにも多くの資金を費やしてきました。
かつて、中国が2001年12月にWTOに加盟し、貿易を自由化すれば、自由貿易が自由な中国をもたらすという理論がありました。しかし、それは実現しませんでした。中国共産党は自由貿易を歪め、搾取する手段を見出し、国民への抑圧を継続しました。習近平政権下ではこの傾向がさらに悪化し、経済への国家統制強化、よりイデオロギー的な中国共産党の主張、自由市場原理を犠牲にした国家安全保障重視といった政策が推進されています。
私たちはただ、中国の人々が自分たちの自由の欠如と、国境を越えた世界にある自由な機会を認識する日を待つしかないのです。しかしご存知のように、中国には報道の自由はない。Ⅹ(旧ツイッター)もない。欧米の新聞も読めない。残念ながら、中国共産党を打倒する民主的な蜂起が起きるまでには、まだ長い時間がかかるでしょう。
更新:01月30日 00:05