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日本人のプーチン妄想...「独裁者」を「英雄」にするプロパガンダ

グレンコ・アンドリー(ウクライナ出身/国際政治学者)

 

狙いは将来にわたる侵略の固定化

「プーチン妄想は根拠がない」と理解させるには、どうすればよいのか。その一つの方法は、ロシアの実際の言動を見ることである。

最も著しいのは、2020年に行われたロシアの憲法改正である。多くの条文が改正されたが、ロシアの本質を最もよく表しているのは、以下の点である。

第一に、領土割譲禁止条項である。日本でも話題になった条項だが、文字通りロシアの領土を割譲することと、ロシアの領土割譲を呼び掛けることを憲法で禁止した。他国なら何の問題もない条項である。

だが、忘れてはならない。ロシアは現在、他国の領土を不法占領している国だ。それは日本の北方領土とウクライナのクリミア半島である。いずれもロシアは「自国の領土」と言い張っており、領土割譲禁止条項は文字どおり北方領土とクリミア半島の返還を禁止する。

ロシアは他国に侵略し、他国の領土を奪うだけではなく、もし将来ロシアにまともな指導者が現れ、ロシアが不法占領する領土を帰属国に返そうと思っても憲法上、できなくしたのである。つまり、ロシアが将来にわたって侵略国であり続けることを固定化する狙いがある。

 

「北方領土の帰属はとっくにロシア」と決まっている

同条文の中で「国境画定作業を除いて」という例外がある。この記述を理由に、日本の一部で「北方領土交渉の継続の余地がある」という見方がある。だが、完全な誤りである。

ロシアの認識では、「国境画定作業」というのは、地図上ですでに決まっている国境を、現地で実際に画定することである。たとえば川、山などの自然物がある関係で、国境線を数百m動かした方が便利な場合は、数ヘクタール程度の土地を他国に譲ることはあり得る。

しかしロシアの国境画定作業はせいぜいその程度で、数㎞に及ぶ単位の話ではない。まして、陸上ではなく海に囲まれた島を丸ごと返還する、などということは「国境画定作業」には該当しない。ロシアからすると、北方領土の国境変更は、憲法で禁止が明記された「領土割譲」に該当する。

さらに、ロシアははっきりと「日本とは領土交渉をしていないし、したことがない」という立場を貫いている。ロシア人の認識では「領土交渉において譲らない」「領土交渉は難航している」という表現さえ間違いなのだ。

彼らからすれば、ロシアは日本と交渉そのものをしたことがない。日本が「ロシアと領土交渉を行なっている」と勝手に思い込んでいるだけである。

ロシアの認識では、日ロ交渉とはあくまで「平和条約の締結」をめぐるもので、領土の交渉ではない。「北方領土の帰属はとっくにロシア」と決まっており、日本との交渉の対象ではない、という姿勢を貫いているのである。

 

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