2022年01月24日 公開
2022年01月24日 更新
世界の温室効果ガスの総排気量の推移をみると、世界の温室効果ガス排出量は増加傾向にあります。2019年の世界の温室効果ガス排出量はCO2換算量で524億トン、そのうち化石炭素によるものが65%と大部分を占めています。2010年以降は、平均して毎年約1.4%増加しており、今後も増えることが予想されています。
一方、日本の温室効果ガスの排出量は12億1200万トン(2019年度)となっており、2014年以来6年連続で減少しています。日本から排出される温室効果ガスの9割以上はCO2ですが、世界ではCO2が温室効果ガスに占める割合は65%なので、日本はCO2排出量の占める割合が高いのが特徴と言えます。
また近年は、経済成長を達成しながら温室効果ガスの排出量を減少させる「デカップリング」が実現されています。日本の温室効果ガスと実質GDPの推移をみると、2013年度頃まではGDPと温室効果ガス排出量の推移は同様の動きを示していましたが、2014年以降はGDPが増加傾向にあるのに対して、温室効果ガスの排出量は減少傾向にあります。これは経済と環境の好循環が可能であることを示していると言えるでしょう。
しかしながら、今のペースのままだと、2030年に2013年度比46%の削減の達成は難しいと思われます。目標を達成するには年間4500万トンの温室効果ガスを毎年削減する必要がありますが、この値はスイスの年間排出量に相当するものです。今後、脱炭素社会実現に向けてそのペースを加速させる必要があります。
今、欧米諸国では脱炭素化を、新型コロナウイルス感染症流行による経済危機からの復興ドライバーとして位置づけています。国際通貨基金(IMF)も、気候変動をコロナによるパンデミックよりも地球と人類に対する大きな脅威、経済と金融の安定に対する根本的なリスクと位置づけ、グリーン化が必要不可欠としています。
実際、こうした動きはすでに出てきています。最近では、脱炭素に向けた事業戦略など気候変動問題への取り組みが企業の評価を左右するようになりました。
今、環境問題などに積極的に取り組んでいる企業を選んで投資する「ESG金融」が世界で急拡大しています。ESG金融とは、環境(Environment)、社会(Society)、企業統治(Governance)などの非財務情報を考慮して行う投融資です。
世界のESG投資の金額を見ると、2020年に35.3兆ドルと、2018年から15%増加しているうえに、日本のESG投資額は2020年に2.9兆ドルと2018年から32%増となっており、日本でのESG投資成長のペースが高いことがわかります。しかし、運用資産総額に占めるESG投資の割合は、日本は24%で、カナダの62%、欧州の42%、アメリカの22%と比べてまだ低い水準となっています。
脱炭素社会を実現するうえでは経済政策も重要です。気候変動対策として注目されているものに「カーボンプライシング」があります。カーボンプライシングとは、温暖化ガスの排出に価格をつけることで、排出削減や脱炭素技術への投資を促すものです。
温暖化ガス排出を抑制する魔法の杖はありませんが、世界では排出を抑制する上ではカーボンプライシングが最も効率的で費用対効果の高い手法であるという意見の一致がますますみられるようになっています。
その主な手法に、「炭素税」と「排出量取引制度」があります。炭素税は温暖化ガスの排出を伴う化石燃料に、炭素の含有量に応じた税金をかけるものです。課税により化石燃料やそれを利用した製品の製造・使用の価格が上がるため、需要が抑制され、結果として温暖化ガス排出量を抑えることができます。
一方、排出量取引は、国や企業などが温室効果ガス排出量の上限を設け、市場を通じて排出する権利を売買する仕組みです。排出枠を超えて排出をするところは、排出枠を超えていないところから余った排出枠を購入します。それでも上限を超えてしまうと罰金を支払うことになります。
世界ではカーボンプライシングの導入が進んでいます。世界銀行によると、2021年4月時点で、世界で炭素税または排出量取引制度によるカーボンプライシングを導入している国・地域は合計で64に上り、世界全体の温室効果ガス排出量の21.5%がカバーされています。10年前の2011年でカーボンプライシングを導入している国・地域は21だったので、この10年間で3倍以上に増加しています。
更新:11月21日 00:05