2022年01月24日 公開
2022年01月24日 更新
「日本人は世界経済の大きな潮流を理解していない」。国際通貨基金(IMF)を経て、東京都立大学教授を務める宮本弘曉氏は、その結果が日本経済の停滞を招いたと語る。本記事では日本人が勘違いしている大きな潮流のひとつである「グリーン化」について、その本質を語っていただく。
※本稿は、宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
経済のグリーン化とは、地球環境に配慮して経済活動を行うことで、経済成長と環境保全の両立をはかるものです。環境や気候の変動は地球規模、人類規模で、経済はもちろんのこと、人間生活に破滅的な打撃を与える可能性があるとされています。
ダボス会議で有名な世界経済フォーラムの報告書「グローバルリスク報告書2021」では、発生可能性が高いグローバルリスクの上位5位のうち4つが環境リスクに関するものになっています。
中でも、私たちが直面している最大の環境問題は、地球温暖化による気候変動です。地球温暖化とは地球全体の平均温度が上昇することです。世界各地で大雨、洪水、熱波、干ばつなどの異常気象が相次ぎ、気候災害が発生しています。こうした異常気象の一因と考えられているのが、地球温暖化です。
地球温暖化は、人間が排出し続けている温室効果ガスが引き起こしているとされています。温室効果ガスとは大気を温めるガスのことで、代表的なものとしては二酸化炭素(CO2)があげられますが、その他にもメタンや一酸化二窒素など様々な種類が存在します。
自然界には、大気中のCO2を除去するプロセスが存在しますが、放出されたCO2の5分の1程度は大気中に残留すると言われています。つまり、「温暖化はすぐには止められない」ということです。CO2の排出量が直ちにゼロになったとしても、大気中にすでに蓄積された温室効果ガスによる温暖化の影響は続くからです。温暖化は完全に防止できるものではなく、どの程度まで抑えることができるかが問題となっています。
温暖化の影響を抑え、経済のグリーン化を達成するためには、これまでと全く姿かたちが異なる経済社会構造を作る必要があります。それは我々の生活、働き方などを根底から変えるものであり、そのための大きな改革に今、世界各国が挑んでいるのです。
今、世界では温室効果ガスの排出量をネットゼロにする「脱炭素化」の流れが加速しています。ネットゼロとは、「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことで、温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いた合計がゼロとなる「実質ゼロ」を指す言葉です。
日本では菅義偉前首相が2020年10月26日の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする方針を掲げました。そして、日本政府は同年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表、グリーン社会の実現に向けた戦略および工程表を示しました。
世界に目を向けると、EUは2019年12月に、2050年までに気候中立を目指すことを決め、2020年末には中間目標として、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で55%減とする目標を設定しました。また、中国は、習近平主席が2020年9月の国連総会において2060年にカーボンニュートラルを目指すことを表明しています。
アメリカはトランプ前大統領時代に地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」から離脱しましたが、2021年1月に就任したバイデン大統領は、気候変動対策を最重要政策のひとつと定め、就任直後にパリ協定に復帰し、2050年にカーボンニュートラルを目指すことを表明しています。
また、アメリカは2021年4月には気候変動サミットを開催し、各国に野心的な削減目標の設定を迫りました。その結果、自国では2025年までに2005年比で26~28%減だった目標を、2030年に同50~52%減にすると設定しました。さらに、日本は2030年度までに2013年度比で26%減としていた目標を46%減に引き上げるなど、いくつかの国は短期の削減目標を大幅に引き上げました。
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更新:11月21日 00:05