2021年06月01日 公開
2023年05月24日 更新
今回のSARS-CoV-2は、2002~03年のSARSウイルスのRNAの配列と酷似しています。いくつかの遺伝子に違いがあるだけですから、ほぼ同一のウイルスと考えてもよいでしょう。
言い方を変えれば、SARSコロナウイルスのごく近い親戚ウイルスであり、SARSコロナウイルスの亜型、亜種のようなものです。ウイルス学的に見れば、目新しいウイルスではありません。
ウイルス学を専門としない学者の中には「未知のウイルス」と言っている人もいますが、ウイルス学的に言えば、既知のウイルスです。既知すぎるくらい既知です。
SARS-CoV-2は、旧型SARSコロナウイルスの弱毒型のバリエーションです。
SARS-CoV-2に感染して肺炎になった人の胸部CT画像が白っぽく、すりガラス状になっていたと報告されています。しかし、この病態がSARS-CoV-2に特有のものかどうかははっきりとしていません。
細菌性の肺炎かウイルス性の肺炎かという違いは、血液性状やCT画像によって確認できますが、「ウイルス性肺炎」と確認されたとしても、どのウイルスによって生じた肺炎かが詳細に調べられることはまずありません。
ウイルス性肺炎で亡くなる人は、日本には毎年数千人いると思いますが、多くの場合、ウイルスが特定されておらず、亡くなった後の肺が詳しく調べられているわけでもない。
そのため、ウイルスごとに起こる肺炎の特徴ははっきりとわかっていません。もしかすると、元々のヒトコロナウイルスで肺炎になって亡くなった人も、SARS-CoV-2と同じような肺炎を起こしていたかもしれません。
SARS-CoV-2に感染して肺炎にかかると、回復しても後遺症があると言われています。しかし、インフルエンザウイルスで肺炎になったときにも、数か月間は後遺症が続くことがあります。ウイルス性肺炎は後遺症になることがありますから、SARS-CoV-2が特別ということはありません。
繰り返しますが、マスコミで、「新型のウイルス」「未知のウイルス」と報道されすぎているため、特別なウイルスだと勘違いされがちですが、あまり特別だと考えないほうがいいでしょう。これまでのウイルスの亜種といえるものであり、起こる病気もウイルス伝播メカニズムもこれまでのウイルス性肺炎と似た側面もあります。
SARS-CoV-2は、SARSコロナウイルス1型(SARS-CoV-1)と同じ感染受容体(ACE2)を用いています。強毒性のSARS-CoV-1と同じACE2を用いているため、「SARS-CoV-2もSARS-CoV-1と同じくらい危険ではないのか」と考える人もいますが、毒性のそれほど強くないNL63も同じ感染受容体ACE2を用いています。
「ACE2を用いているから毒性が強く、肺炎になりやすい」というわけではありません。ただし、800年前くらいにNL63が誕生したときの毒性は確認されていません。現在のNL63は毒性が比較的弱いですが、過去には毒性が強かった可能性も否定はできません。
今回のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)についてまとめてみると、
●コウモリ由来
●SARSコロナウイルスと近縁
●ウイルス学的には充分既知のウイルスと言える
と言うことができます。
「これからは新しい生活様式」などと言われていますが、SARS-CoV-2の誕生によって、人類がこれまでとはまったく違った新しい生活様式を強いられるわけではありません。229Eとは少なくとも52年共存しています。
人類はずっと「ウィズコロナ」をやってきました。13世紀にコロナウイルスNL63が誕生していますから、800年間も「ウィズコロナ」が続いてるのかもしれません。これまでずっとやってきた「ウィズコロナ」を続けていくだけです。
「ゼロコロナ」という言い方も誤解を生みます。仮にSARS-CoV-2がこの世から消え去ったとしても、「ゼロコロナ」にはなりません。
SARS-CoV-2以外にも、別のヒトコロナウイルスが存在していますし、動物由来の新たなコロナウイルスが人で流行する可能性もあります。私たち人間は動物とともに生きていく以上、常に「ウィズコロナ」です。
更新:11月24日 00:05