Voice » ペンキで白黒柄に塗られた馬はもういない…20年で消えた中国の「B級感」
2021年05月26日 公開
2024年12月16日 更新
【杉山】じつは僕、中国留学をつうじて、自分の性格が変わったと思っているんです。中国人は何事も白か黒を明確にしますよね。その影響を受けて、とても分かりやすい性格になったと指摘されるようになったのです。悪く言えば、以前よりもキツい性格になった(笑)。でも、人としての深みがでたと言っていただくケースは増えました。
【安田】たしかに中国人は、白黒はっきりしている人も多いですよね。
【杉山】今日や明日を生きるために、すぐにイエスかノーかを決めなければいけない環境に身を置いているからでしょう。「あなたはどういう人間なの?」と問われる局面が多いので、自分の肩書をすぐに喋れないと、時には相手に「舐められて」しまう。
それは、じつは西洋の文化にも似ている空気なのですが、人として強くしてくれた国でしたね。分かりやすくいえば、自分が嫌だと感じたときにはちゃんと「ノー」と言えるようになりました。
【安田】そのほかに、発言を求められた時に、よく分からなくてもとりあえず喋る、という風土がある気がしますよね。
【杉山】あります、あります。
【安田】一昔前までは、誰かに道を聞かれたとき、その人自身も分かっていないのにとりあえず喋って、結果として違う方向を教えるような中国人も多かったんでする。決して悪気があるわけではなく、たとえ事実の裏付けがなかろうとも、自分が多くの情報を持っているように振る舞いたい(笑)。何かを訊ねられたら、とにかくたくさんの言葉で返さないといけないという意識が強いのでしょう。
【杉山】こちらが1を聞いたら、10で返してきますよね。とにかく、めちゃくちゃ喋るんですよ、中国の方々は(笑)。
【安田】私自身のことでいえば、公の場で話す機会もある仕事なので、中国でのこうした体験はもの凄く役に立ちました。自分の意見をとにかく伝えないといけない職業ですから。
【杉山】ある中国人の方と話していたとき、「わたし、あなたのこと嫌い」と言われて、ショックを受けるよりも、めちゃくちゃ面白いと感じたのを思い出しました。だって、その人と会話したのは、たった10分のことですよ。それなのに、事細かに「ここが嫌い」と言われたんですから(苦笑)。
【安田】少し話が違いますが、ハリーさんはジョークの感覚については、どう思われますか? 日本人と中国人、さらにいえばイギリス人とのあいだに、差は感じるでしょうか。
【杉山】中国の笑いのセンスは、アメリカ寄りだと思います。
【安田】やっぱり。私も同じ感想です。
【杉山】日本で言えば、関西のお笑いは彼らと似ているところがある気がしますね。「ワーッ」「ドカーン」という笑いのセンスというか。一方、イギリス人のユーモアには皮肉も少し含まれます。そう考えていくと、いまでは「米中新冷戦」などの言葉も飛び交いますが、本来であれば中国人とアメリカ人は波長が合うはずなのにな……とも感じているんです。
【安田】たしかに、個々人では馬が合う気がします。中国もアメリカも、物理的にとても大きな国なので、ローコンテキストでないと話が通じないのでしょう。だからこそ、大雑把に面白いことをぶつけ合う。イギリス人のユーモアは、その逆でハイコンテキストな笑いを交換するイメージです。
【杉山】米中に関しては、現場レベルでは波長が合うからこそ、多くのビジネスがとてつもないスピードで進んできたのでしょうね。もちろん、現在は人権問題など多くの問題があるので、そんなに単純な話ではなくなりましたが。
更新:05月14日 00:05